「どんな福祉活動でも、相手を理解することは大事なこと。被災された人の立場や経験を理解しているつもりでも、本当に理解できていないことは多い。明日はわが身だと思うことが大事なんじゃないかな」
そう語る俳優の杉良太郎(67才)は、自らも阪神・淡路大震災で被災した経験を持ち、数々の被災地を精力的に支援することで知られている。今回も震災直後から大規模な支援活動を続けており、その規模は個人レベルをはるかに超えている。2011年4月1日には支援が遅れていた宮城・雄勝町でカレーライス、豚汁、野菜サラダ、杏仁豆腐など合計2万食の炊き出しと、大量の救援物資を個人で提供した。
杉は支援をはじめた当時をこう振り返る。
「あの日、これは大変なことが起こったと思いました。あまりに被害の規模が大きすぎて、個人でやる支援活動は一瞬で終わってしまう、と。すでに都内では食材やいろいろなものが買い占められていましたから、大阪まで行って妻(伍代夏子・50才)と作戦会議をしたんです。
救援物資のほかに炊き出しの材料、滞在中スタッフの必要なものなどを集め、企業にも協賛をお願いし、被災地ではガソリンや灯油が足りないことがわかり輸送するにはタンクローリーが必要になったのでその運転手も手配して、結局、車両15台で向かいました」
彼が徹底して心がけているのは、自分で手渡すこと。「どうぞ、受け取ってください」と“下から差し上げる”こと。そして、“頑張らないでください”と声をかけることだ。
「ただでさえつらいのに、上からいわれたら心が砕けてしまう。プライドも許さないですよ。頑張るのは私たちのほうなんですよね」(杉)
食料が欲しい、家が欲しい、お金が欲しい、仕事が欲しい…刻々と変わっていく、被災地でのニーズ。現地へ通い続けている杉は、いまは何が必要だと感じているのか?
「仮設住宅はあくまで仮設。一時しのぎの住宅なんです。本当は、木材が豊富な東北なら仮設ではなく“永久住宅”を建てるべきだと思います。自分の家がなくなり、財産もなく、働く場所もなく、親しい人の命さえも失った人たち。さらに2年経ったら出なければという強迫観念。精神が不安定になりますよ。
人間はくじけてしまうとやる気や希望がなくなってしまう。阪神のときは、仮設で孤独死されるかたが多くて…。それはあってはならないこと。心がめげないような精神的なケアが大事だと思います。それと、約5000人いるといわれる震災孤児は、将来がとても不安だと思います。いまは彼らとじっくり会話をしたい」(杉)
昨年10月に行ったチャリティーイベントで集まったお金は、彼らが学校に行く費用や生活費へと全額寄付した。
「いまからできること。実はそれがいちばん難しい。現地に行けない人も多いですからね。東北のものを買って支援することもひとつ。何より自分が被災者だったらどうかを考え続けることが大事だろうと思います」(杉)
※女性セブン2012年3月22日号