心臓の冠動脈バイパス手術を受けた天皇は、退院後、全国から集まった約10万人分の記帳名簿に目を通し、手術の成功を願った国民に対し、「感謝の気持ちを伝えてほしい」と話した。
その名簿のなかに、よく知られた一組の夫婦の名があった。雅子妃の実父母、国際司法裁判所判事の小和田恒氏と優美子夫人である。二人は天皇が入院する前日の2月16日に皇居を訪問し、記帳したという。
宮内庁記者会の記者はこれに驚いた。
「親戚という立場、まして皇太子妃の両親ならば、参内して両陛下に直接お見舞いを申し上げるのが自然ではないでしょうか。両陛下の親戚が記帳するというのは、あまり聞いたことのない話です」
昨年11月に天皇が気管支肺炎などで入院した際、雅子妃は自身が体調を崩したこともあり、見舞いを控えた。そこで今回の入院では、雅子妃の見舞いが実現するかどうかが、メディアの一大関心事となった。あるいは小和田夫妻は“代理見舞い”と勘繰られることを嫌って、あえて記帳という形式を取ったのかもしれない。
しかし、それだけでは表層的な見方になる。
この間報じられることのなかった小和田氏と雅子妃をめぐる経緯からは、父と娘の深い葛藤が浮かび上がってくる。宮内庁関係者が明かす。
「昨年12月に、国際司法裁判所のあるオランダから一時帰国した小和田氏は、1月に東宮御所を訪問し、雅子妃とお会いになりたいと希望していました。ところが関係各所の折り合いがつかず、御所訪問はなかなか実現しなかった」
この面会を待望していたのは小和田氏だけではなかった。いまだ適応障害に苦しむ雅子妃も、信頼する実父との面会を強く望んでいたという。
「雅子妃の側から、それならば自分が出掛けて御所の外でお会いになりたいとの要望があったのです。が、それに対しては東宮職内部でも“この時期に里帰りか、といわれかねない行動はいかがなものか”と懸念する声があり、結局、外での会合は実現しませんでした」(同前)
この経緯は、別の宮内庁関係者も認めた。義父である天皇がご不例の折、実父との面会を待望した雅子妃と、難色を示した東宮職、そしてそれを受け入れた小和田氏、それぞれの心中は想像に難くない。小和田夫妻が記帳に訪れたのは、そんなタイミングだったのである。
この話にはさらに続きがある。3月1日に雅子妃が皇太子とともに病院を訪問し、天皇への見舞いが実現すると、天皇の退院前日の3月3日、東宮御所にて、雅子妃が2か月も待望した東宮家と小和田家の面会が、ついに果たされたのである。面会は余人をまじえず皇太子夫妻と愛子内親王、小和田夫妻の5名だけで行なわれたという。
この件について、宮内庁東宮職は、「皇太子同妃両殿下の私的なご活動に関する事項については、従来より発表しておりませんので、回答を差し控えさせていただきます」といい、小和田氏が所属する国際司法裁判所からは回答がなかった。
小和田氏はこの2月、国際司法裁判所の所長を退任したが、今後も判事として残る。雅子妃との面会後、すぐに日本を発っている。
※週刊ポスト2012年3月23日号