米寿を迎えたいまも、多数の料理教室の生徒をかかえ、テレビや雑誌に引っ張りだこ。上品かつ軽妙な語りとともに和の家庭料理を伝える“登紀子ばぁば”こと、料理研究家の鈴木登紀子さん(88才)。そんな鈴木さんが調理の“塩梅”について教えてくれた。
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調味の塩梅については、ご自分の勘がとても大事ですよ。お教室で配る「作り方」には調味料の分量を記しておりますが、それはあくまでも目安。まずはそのとおりに作ってみて、「なるほど、このほうがずっとおいしい」とか「わが家はもう少し濃いめがいい」といった感想や反省が出てくるはずです。そうして何回か作っていくうちに勘どころが分かり、ご自分の舌を頼りに目分量で調味できるようになります。
頭を使って考え、試行錯誤することが、お料理上達の鍵といえましょうか。なにやらお勉強のようで、顔をしかめるかたもいらっしゃるかもしれませんが、実際に、お料理にはひとつの法則がございます。
それは「足し算はできても、引き算はできない」ということ。
調味料は一度加えてしまうと、足すことはできても、引くことはできません。それでも、砂糖の入れすぎならばおだしとしょうゆである程度は調節もできますが、塩の入れすぎは取り返しがつきません。
また、今日はいつもの3倍作るから塩も3倍で…なんて、もってのほか。2倍半でよいのです。昔から「塩は塩を呼ぶ」という言葉がありますが、材料に合わせて塩を倍々にしていくと、とんでもなく濃いお味になってしまいます。
調味は「味をととのえる」と書きますね。どうか調味料は最初は控えめに、きちんと舌で確認しながら、上手に調えてくださいませ。
※女性セブン2012年3月22日号