「君が代起立条例」が2月末に大阪市議会で成立した。すでに昨年6月には大阪府議会で同条例が成立しているため、府立校と大阪市立校の教員は、国家斉唱時の起立が義務となった。
すでに多くの府立高校で行なわれた卒業式では、3月2日までに17校20人が不起立を敢行。教育現場では、一部の教師たちが自らのクビをかけた“闘争”を本格化させている。
だが、「教育は2万%強制」という橋下徹・市長が怯むはずもない。今後、卒業式が予定される学校では、君が代斉唱時における起立の厳格化が次々に実施されている。
各学校長には、教職員に起立させる「職務命令」を出すよう、府教委から通達が出された。大阪市教委も、例年は1回限りだった通達を3回も出した。
「職員会議で校長が起立指導し、それでも『立たない』という教員には職務命令を出すように指導している。職務命令に従わないと懲戒処分もあると理解してもらいたい」(市教委事務局)
“処分”が実行された学校もある。市内の府立X高校では、「不起立宣言」をした教師が異動させられたというのだ。
同校の教諭が明かす。
「校長に不起立宣言していた教師の異動が、2月末に突然決まりました。教育委員会と校長が相談のうえ異動を決めたようです。教職員の異動は3年単位が一般的で、普通は6年以降の人間が対象になるのですが、この先生はなぜか4年目というタイミングだった。担当科目の指導力には定評があって、大学受験を控えた生徒たちからも信頼されていただけに、異動の理由は不起立以外考えにくい。“制裁人事”だと震え上がっています」
一方で学校長側も悩みは深い。“不起立教師を1人でも出したら、自分の指導力に疑問を抱かれる”と、橋下氏と教職員の板挟みとなっているのだ。府立高校の教諭の1人は、こう打ち明ける。
「どうしても立ちたくない教員を式当日に休ませたり、会場外の警備や裏方に配置したり、何とかやりくりしていますよ。中には“起立してくれさえすれば、評価を良くする”と交渉する校長や、『あの先生が不起立運動をしている』と告げ口して点数稼ぎする教師もいる。子供たちに合わす顔がないですわ」
※週刊ポスト2012年3月23日号