間もなく東日本大震災から1年が経つが、復興は遅々として進まない。その原因は民主党のリーダーシップ欠如にあると大前研一氏は指摘する。
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方針も示さないで復興構想会議に丸投げした民主党政権はあまりにも無能・無策である。3.11から1年近くも過ぎてようやく復興庁を設置するという“鈍足”に加え、まだどのように東北を復興しようとしているのかさえわからないという体たらくで、霞が関の官僚だけが復興庁の設置によって“焼け太り”したのである。
しかも、あろうことか野田政権の発足後は永田町で東北復興や原発事故対策の声が急に小さくなり、代わって社会保障と税の一体改革に伴う消費税の増税が最大のアジェンダになってしまった。実際、復興構想会議は昨年6月に提言をまとめて以降は機能を停止し、野田政権になってからは11月10日の1回しか会合を開いていない。
政権交代後の2年半、民主党は党内抗争に明け暮れ、足の引っ張り合いに終始してきた。首相が3人代わり、3.11後の最もホットなトピックスは全く意味のない「菅直人降ろし」だった。その間に、多くの大臣が失言などで回転ドアのようにクルクルと目まぐるしく交代した。従来なら陣笠議員にすぎない面々が次々と入閣し、大臣経験者だけが“量産”されたのである。
このため、今は官僚たちがサボタージュを始めている。どうせ大臣はすぐに代わるのだから、真面目に仕事をしてもしょうがない、というわけだ。加えて次の総選挙では民主党が負けて再び政権交代が起きるとみられているので、本音の部分では協力しなくなり、当面、自省の権益確保に集中している。
もはやこれ以上、民主党にこの国の舵取りを任せておくわけにはいかない。このままでは東北は真っ当に復興することができず、日本経済全体が一段と疲弊してしまう。今の日本に進出する外国企業があるとは思えないし、ITやバイオのトップ企業が東北に大挙立地するとも思えないが、とりあえずそういう白昼夢のような「復興計画」になっている。
ビジョンもリーダーシップもなく、ましてや危機管理の基礎知識もない民主党政権には、さっさと退場してもらわねばならない。高みの見物をしていた自民党も同罪である。これは国家のメルトダウンである、という危機感だけは共有したい。
※SAPIO2012年3月14日号