家族や友人を亡くした悲しみ、そして家や職を失い、将来が見えぬ不安を抱え、被災者たちはこの1年、苦しい道のりを歩んできた。しかし、くじけそうになったときに、ふと出合った言葉に支えられたという人は少なくない。
岩手県釜石市の松田節子さん(75才・理容師)は昨年5月、天皇皇后両陛下が釜石中学校をお見舞いされたとき、避難生活中だった。傍らに皇后美智子さま(77才)がいらっしゃるときに余震があり、思わず美智子さまの手を握ってしまった。すると、美智子さまはゆっくりもう一方の手を重ね「大丈夫ですよ」とおっしゃった。
「赤ちゃんのように柔らかい手でした。避難所で天皇陛下と皇后陛下は何度も膝をついて避難者とお話しされていたうえ、私にも優しく声をかけてくださいました。津波で店を失って落ち込んでいましたが、“これは頑張らねえと”と思いましたね」(松田さん)
一時は引退を考えた松田さんは美智子さまのお言葉に奮起。昨年6月、店を再開した。
※女性セブン2012年3月22日号