着物をきっかけに2組の夫婦がクロスオーバーし、秘密の快楽を求めてダブル不倫に発展していく――そんな内容の、作家・村山由佳さんの小説『花酔ひ』(文藝春秋)が話題になっている。
物語は、東京の呉服屋の一人娘・結城麻子がアンティーク着物の商売を始めるところからスタートする。麻子と夫の誠司は、学生同士のようなカップルだったが、実は誠司は、妻の天真爛漫さに苦痛を覚えていた。
一方、京都の葬儀社の社長令嬢・桐谷千桜は、幼いころに叔父によって誰にもいえない快楽を教えられた。子をもうけながらも、夫で婿養子の正隆とのセックスでは、一度も満足したことがなかった。
長年連れ添ってきた夫婦間のセックスで満たされないものを抱える2組の夫婦。彼らが偶然、出会ってはならない相手と出会い、心のストッパーが外れたときに、決して開けてはならない扉を開けてしまう――。
「夫婦は子供が生まれると社会的な役割が大きくなって、男と女の部分が置き去りにされていきます。一見幸せそうに見えても、性愛も含めて満たされていない夫婦が多いのではないでしょうか」
そう村山さんは話す。
結婚でパートナーを選ぶ際、一緒にいてラク、この人となら子育てができる、など堅実な理由で相手を選ぶことは比較的多いのではないだろうか。
女性セブン読者の中には、性の一致なんて大きな問題ではないと思ってはいても、女盛りの40代にはいってきたときに、それが大きな問題として頭をもたげてきたという人もいる。
「結婚して13年目。3才年上の夫とは夫婦仲はいいのですが、老夫婦のような関係でセックスレス。セックスに固執することはないと思いますが、全然ないのも寂しい。欲望は食欲で満たせばいいかとも思いますが、太るのも嫌だし…」(40才・主婦)
この女性は、「他の女性たちがいくつまでセックスをしているのか知りたいんです」ともいう。
村山さんは、40代の女性たちは「賞味期限を意識する」年代だと指摘する。
「体調や容色などに変化が起こり、更年期や閉経を経験するかたもいます。いつまで女でいられるのかしらと、女性であることが終わっていくかのような幻想に怯える。それは男性以上に強く、恋愛もこれが最後かもしれないという焦りや飢餓感、性への妄想とが一緒になることもある。夫婦で、性的なファンタジーが一致するのは宝くじに当たるようなもの。だから、夫婦以外でそれを満たせる相手と出会ってしまったときに、その関係にひととき命を燃やすのはそんなに罪なのでしょうか」(村山さん)
世の多くの夫たちは、“妻は家族だから欲情しない”といい切る。このような言質は、読者の皆さんの耳にも届いているのではないか。実際に直接、夫から聞かされる妻もいる。
「夫から、もうセックスの対象としては見られないといわれ、自分の欲望の行き場がなくなってしまった。スポーツして疲れれば眠れると思って、毎日10kmも走っていたときもあります。あるとき、会社の同僚に口説かれてそういう仲になり、今度は一緒に旅行に行こうと計画しています。あと何年、誰かに口説いてもらえるかと思うとあせっちゃいますよ」(47才・会社員)
※女性セブン2012年3月22日号