かつては生涯打率や生涯防御率にこだわり、晩節を汚すまいと引退を早期に決断する選手が多かった。あの王貞治、長嶋茂雄でさえ40歳を超えてプレーしなかったのは、やはり散り際を考えていたからだろう。
では、プロ野球史上最多となる17人もの40歳オーバー選手たち(シーズン中に40歳になる選手含む)は、どういった気持ちで今季の開幕を迎えようとしているのか。そこには、プロとしての矜持だけでは説明しきれない打算も見え隠れする。
スポーツ紙のベテランデスクがいう。
「『まだやれる』というプライドで続けている選手もいますが、引退後のことを考えている選手も多い。評論家デビューするにしても監督、コーチに就任するにしても、『名球会』という肩書きは大きい。投手なら200勝以上か250セーブ以上。打者なら2000本安打以上という規定ですから、力が衰えたからといってその手前でユニフォームを脱げる選手はなかなかいないんです」
2000本安打まで、あとわずかに迫っているのは稲葉篤紀(日本ハム)、宮本慎也(ヤクルト)、小久保裕紀(ソフトバンク)の3人。彼らが想定しているかどうかは別として、記録達成と共に、次の職探しが有利に進むという“特典”が付く。
評論家の世界は大物たちが辞めず、上が詰まっている。選手たちは皆、限られた就職先の椅子が空くタイミングを見計らっているという向きもある。
一方、選手側の都合だけでなく、球団が現役続行を求めているケースも少なくない。
「一部の高額年俸の選手には金額に見合った活躍をしてもらいたいですが、年俸1500万円の下柳剛(楽天)や1200万円の木田優夫(日本ハム)のように格安年俸の選手には“若手の手本になってほしい”という狙いもある。ベテランは試合に出るだけが仕事じゃない。一流と呼ばれた選手が一年一年、必死にもがく姿を見れば、若手や中堅の身も引き締まるというもの。活躍できなくてもチームを引き締められるんです」(同前)
不惑を超えてなお、第一線で身体を張る男たち。花を咲かすか、はたまた散るか――17人17様のドラマがこれから、始まる。
※週刊ポスト2012年3月23日号