野田佳彦・首相は3年前の街頭演説で、血税をすする役人を“シロアリ”と批判した。この国を食い荒らす害虫は国家公務員だけではない。国家公務員の給与削減法案は成立したが地方公務員234万人の懐には全く手が突っ込まれていない。
そんな地方シロアリの豪華な「アリ塚=庁舎」が現在、建設ラッシュを迎えている。その費用は、山梨県甲府市90億円、兵庫県豊岡市57億円、長野県安曇野市79億円、宮崎県延岡市75億円といった具合だ。この立て替えの財源には「合併特例債」が充てられている。2005年3月末までに合併した市町村のみに認められる特別な地方債(借金)で、合併から10年間使うことができる(2016年度まで)。
こうしたバカ高庁舎はシロアリの「娯楽スペース」としても使われる。
橋下徹・大阪市長の肝いりで始まった職員組合の活動実態調査でそれが明らかになった。
大阪市の第三者調査チーム(代表は大阪市特別顧問の野村修也・中央大学法科大学院教授)が3月1日に公表した中間報告書には、組合や職員が許可なく庁舎を不法占拠している実態が列挙されている。
一例をあげると、同市の施設である交通局庁舎では1階の大会議室が労組の「中央委員会会議室」として優先的に使われ、厚生課の倉庫には組合専用の冷蔵庫、ソファ、テレビ、パソコンが置かれている。湯沸室は組合専用の電子レンジ、食器乾燥機、湯沸かしポットなどを備えて厨房と化していた。
都島区役所の和室には囲碁など室内遊戯具が揃えられている。此花区役所の倉庫を開けるとサーフボード、野球道具などがゾロゾロ出てきて、大量の洗濯物まで保管されていた。
市営地下鉄の駅(乗務所)や市バスの営業所などの施設内部はまるで職員たちの無料スポーツクラブだ。ある営業所の会議室には卓球台2台が置かれてネットも張られ、いつでもプレイOKの状態。地下鉄の各駅の乗務所には広いスペースにウォーキングマシンからベンチプレス、サンドバッグ、エアロバイク、ハイプーリーなどの筋トレマシンがずらりと並んでいる。
もちろん、いずれも職員の福利厚生のためのスペースではない。会議室など役所の業務に使う部屋が組合室や卓球室、ジムとして占拠されているのだ。
報告書ではこう指摘している。
〈地下鉄の乗務所やバスの営業所では、大半の場所にトレーニングマシーンが置かれているということである。(中略)職員の福利厚生の一環として職員のサークル活動を支援しているという整理になっているが、少なくとも設置スペースの提供については、正規の手続きを踏まない「ヤミ便宜供与」にあたる疑いがある〉
報告書には交通局の組合幹部である市バス運転手が1か月に2日しか乗務していない実態も書かれているが、仕事をしないで体がなまるから、税金で建てた役所の施設を勝手に使ってトレーニングに勤しむ地方シロアリたちの姿が浮かび上がってくる。
※週刊ポスト2012年3月23日号