もうすぐプロ野球の新シーズンが開始するが、BS・CS放送「J SPORTS」が、毎年11月~翌年2月のオフシーズンに放送する『ガンバレ日本プロ野球!?』は、「ガンプロ」「ガンバレ」などといった略称で親しまれている人気番組。普段は見られないような選手の素顔、そして本音を聞けるとあって、プロ野球ファンの間でも人気が高い。
メインMCを務めるのは、金村義明氏(元近鉄、中日、西武)と大塚光二氏(元西武)の2人。金村氏が関西弁の軽妙なトークで場を盛り上げれば、大塚氏が予期せぬ天然ボケで爆笑を誘う。しかし、清原和博氏(元西武・巨人・オリックス)のオリックス入団にこの番組がかかわっていたことを知る人は少ない――。
2004年の球界再編の影響で近鉄バファローズが消滅、オリックス・ブルーウェーブと合併し、2005年からオリックス・バファローズが誕生した。監督に就任したのは、かつて両球団で監督を務めた仰木彬氏だった。
仰木氏は金村氏の近鉄時代の恩師ということもあり、後に金本知憲(阪神)が更新するまで、番組最多出演記録を持っていた。
2004年オフ、監督就任祝いを兼ねて大阪の料亭『天王殿』で、3時間のロングインタビューを行なう。この席で、金村・大塚両氏はある打診を受けた。
「“オレは清原が欲しい。お前らは裏で動くオリックスのコーチや。ワシのために協力してくれ”と頭を下げられた。仰木さんは清原の電話番号を知らなかったのでオレが教えると、2人が3日後に会うことになった」(金村氏)
だがこの時、清原氏は首を縦に振らず、巨人に残留する。清原氏を獲得できぬまま始まった2005年のキャンプだったが、「裏のコーチ」に任命した2人には仰木監督からサプライズプレゼントが渡された。
「キャンプに行くと、俺たちにオリックスのユニフォームを用意してくれていた。俺が6番で、大塚が23番」(金村氏)
「ボクなんか現役時代、仰木さんとは敵チーム同士でした。どちらかといえば策士でイヤな監督という印象で、野次っていた相手です。番組がなければ接点がなかった。そんなボクにまで仰木さんはユニフォームを作ってくれていた。本当に感激しました」(大塚氏)
実はこの時、すでに仰木氏はがんに冒されており、この年のオフに逝去する。
「シーズン中にも応援にいったけど、7月頃から時間があれば寝ている状態。でもファンに元気なところを見せなアカンと、トレーニングをする姿を撮影させてくれた」(大塚氏)
金村氏は通夜の席で、清原氏に仰木氏の気持ちをメールで伝えた。名球会のイベントでハワイにいた清原氏はすぐに帰国。記者会見を開き、オリックス入りを発表した。
「ガンバレのキャンプ取材は1月31日に宮古島入りし、2月1日にオリックスキャンプからスタートするのが恒例。でもこの年だけは、2月1日が小倉の仰木さんの家からのスタートになった。お焼香させてもらい、奥さんから“(夫を)一緒に宮古島に連れていってやって”といわれたのが印象的でした」(金村氏)
※週刊ポスト2012年3月23日号