2万人以上の兵力を投入して「トモダチ作戦」を展開した在日米軍。私たち日本人は在日米軍の支援を当然のことと思い、マニュアル化されていると考えがちだ。しかし、米軍の支援はあくまでも好意によるものなのである。
では、首都直下地震の際「第2のトモダチ作戦」はどう展開されるのか。首都が大地震に見舞われた時、在日米軍の主力も被災する可能性があることを想定して、在日米軍の動きを軍事評論家の潮匡人氏が予測する。
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忘れてならないのは、在日米軍自身が被災するリスクである。横須賀が津波その他で被災する可能性を否定できない。横須賀には在日米海軍司令部がある。近くの座間(神奈川県)には在日米陸軍司令部がある。横田基地には在日米軍司令部が置かれている。これらが機能不全となれば、ダメージは大きい。
基地や司令部機能は、早急に復旧できたとしても、基地の外は、そうはいかない。三沢基地(青森県)や、岩国基地(山口県)、普天間基地(沖縄県)などから、横田まで救援物資を空輸できたとして、横田から、どう運ぶのか。
想定されてきた「マグニチュード(M)7.3の地震」ですら、首都直下の被害は深刻だ。建物全壊棟数は最大約85万棟(内閣府)。首都圏の大動脈である環状道路沿いも「焼失が顕著」と想定されている。仮に、M8の地震となれば、被害はそれに留まらない。
首都直下なら、在京アメリカ大使館(港区赤坂)も被災を免れない。駐日大使以下の職員や家族に加え、ビジネスマンを含む多数の米国民も被災する。冷徹に予測すれば、米軍は、横田や空母からヘリを飛ばすなどして、米国民の保護救出を最優先に活動するであろう。「トモダチ」は後回しに違いない。
実は、米国に「トモダチ作戦」を遂行する条約上の義務はない。法的にはアメリカの好意に頼っている。だからこそ、事前に日米間で調整し、必要な訓練を重ねるべきなのだ。
首都直下となれば、永田町や霞が関、大手町、丸の内等々、わが国の政経中枢が麻痺する。東日本大震災を凌駕する甚大かつ深刻な被害が発生しかねない。そのとき初動の対処を誤れば、間違いなく国が滅びる。米軍との連携強化を図ることは、焦眉の急務ではないだろうか。
※SAPIO2012年3月14日号