日本では、男性は性欲があるのが健康的で当たり前、という考え方が定着している。その一方で女性たちは、“セックスは楽しいこと”とは、母親からも周囲からも教えられてこなかったはずだ。むしろセックスは隠すもので、人前でセックスの話をするのは恥ずかしいことというのが一般的だろう。セックスの話を持ち出せば、「あの人はしょっちゅうそんなことばかり考えているのかしら」と周りから白い目で見られることだってある。
妻だから母親だから、性への飢餓感など、ないふりをして生きていかなければいけないのだろうか。“ダブル不倫”を描いた小説『花酔ひ』(文藝春秋刊)が話題となっている作家・村山由佳さんはこう話す。
「自分にまで嘘をついて、性欲なんかないと思い込んで生きている女性ほど、他の女性の性欲を非難しがちです。日本では古来、もっとおおらかに性を賛美し、少なくとも隠すようなものではなかったはずなのに、特に近代においてはその傾向が強い。妻たちは、心も体も満たしてくれるセックスを夫にさえいい出せずにいるんです」
自分にはもう性欲はない。セックスなんて必要ない。セックスがしたいかどうかさえわからない。そう思い、あるいは自分に無意識にいい聞かせて生きる女性たち。
韓流のスターたちやアイドルグループに熱い視線を注いでいる女性たちは、「応援しているだけで、彼らに性的な目線を持っていない」と口を揃える。しかしスターとセックスをするというリアリティーがないだけで、実は自分でも気づいていない性の投影があったと語る女性もいる。
「子供からも手が離れ、夫ともセックスレスでしたが、そんなものなのだろうと気にも留めずに、ある韓流アイドルを追っかけていたんです。少しでも近づきたいと習いに行った韓国語教室の先生と、そういう関係になってしまいました。私には性欲なんてもうないものだと思っていたのに、その情事がきっかけになって、本当はセックスがしたかったんだ、ということに気づいてしまって…」(51才・主婦)
※女性セブン2012年3月22日号