がんと並ぶ三大疾病のひとつに心筋梗塞がある。昨年は、元サッカー日本代表の松田直樹選手が34歳の若さで亡くなった。心筋梗塞による死亡者は年間4万人にものぼる。これは、がんに次ぐ哀しい記録になっている。
東京の私立医大教授が教えてくれた。
「1960年代には心筋梗塞の死亡率が3割。やがて集中治療室(ICU)の登場で15%に減少し、現在ではカテーテル治療の普及で10%以下になっています」
さらに、心筋梗塞治療には新たな光明がさしつつある。脚の閉塞性動脈硬化症治療で信州大学の池田宇一教授が、「血管再生治療法」を大きく前進させたからだ。
2005年、池田教授は重度の狭心症患者から骨髄液を採取。そして、血管の元となる「CD34陽性細胞」を分離採取し心臓に移植、血管を再生する手術に成功した。
池田教授はいう。
「心筋梗塞は死に至る動脈硬化性疾患の代表です。骨髄細胞はさまざまな細胞に代わりうることがわかっているだけに、心臓の血管にも応用できないかと研究を続けていました。しかし、患者さんへの手術数が少なくエビデンス(科学的根拠)が不十分で、先進医療の適用までは、もう少し時間がかかるかもしれません」
池田教授は10年以内の実用化を期待している。
※週刊ポスト2012年3月23日号