被災地で人の体や気持ちを元の状態に戻すための人的支援。ロート製薬は震災直後に仙台に復興支援室を設置。救急箱を持って被災各地の学校を回り、夏過ぎからは鍼灸師、整体師、アロマ療法士たちで結成した通称「リラクゼーション隊」を、岩手や宮城の沿岸の小中高校に派遣した。昨年10月までに186人。自身を後回しにしてしまいがちな教師たちに貴重な癒しを与えている。
派遣された鍼灸師・本間智子さんはこう語る。
「ひとつの学校に、流された隣の学校、合同庁舎、漁協までも入っててんやわんやなんです。避難している人がいる横では授業も始まって……。先生たちは、寝不足、疲労、過緊張。頑張りすぎて、体のスイッチが片時もオフにならない状態になっていました。鍼を打っているうちに、皆さん、施術ベッドで小一時間くらいすやすやと眠られて。『何か月ぶりに素に戻った』と周りから言われてましたね」
同じく隊に参加したリフレクソロジストの竹内喜美江さんは体験をこう語る。
「先生たちご自身が被災者にもかかわらず、自分たちは尽くす側だとの思いが強く、自分の体を省みない。ある先生は、3月11日の夜の辛い記憶を見知らぬ私に打ち明けて下さいました。話し終えた後は体が柔らかくなったんですね。ホッとされて。話すだけで楽になられて。先生という立場だからこれまで辛いと言えなかった。口に出せない思いを聞くこと自体が、とても大切なケアになることを改めて学びました」
※SAPIO2012年4月4日号