復興のシンボルにしたい。そんな思いから、今年2月に行なわれた「第63回さっぽろ雪まつり」には、福島県会津若松市の名城、鶴ヶ城が登場した。幅20m、高さ15m、奥行き21mのひときわ巨大な建造物だ。作業にあたったひとり、陸上自衛隊第11旅団第18普通科連隊の鈴木茂曹長(53歳)は、胸を張る。
「通常、雪像は、1700個程度のブロック(パーツ)を貼り付けて作るのですが、今回は3500個ものブロックを使いました」
実際、作業日数は1か月弱。18普通科連隊を中心に、150名が投入される大がかりなものだった。
雪像製作は、根気と技術を要す。まず足場を組み、雪を固め、荒削りを行なう。次に細部を削り、最後に同時並行で作っていたブロックを貼り付けていく。それを6つのグループが手際よく作業していく。
作業にあたった隊員の大半は、岩手県宮古市で給食支援や給水支援に4か月間、従事した。第11旅団から派遣した隊員は451名にのぼる。
「自分たちが作った食事をおいしいと思ってくれるだろうか、とそればかり考えていました。自分たちにできることはそれだけでしたから」(鈴木曹長)
東北の一日も早い復興それは被災地に行った隊員たちの共通の思いだった。それが形を変え、雪まつりの雪像として結実する。
技術委員という雪像製作の中心メンバーのひとり、今野礼貴士長(24歳)は、作業を見に来た観光客の行動に励まされたと言う。今野士長も、給食支援で被災地入りした隊員だ。
「作業中、観光客が好きなことを書いていいホワイトボードを設置したんです。そうしたら、外国から来た観光客の方まで、『ニッポン、がんばれ』『フクシマ、風評被害に負けるな』と書いてくれた。世界中が気に掛けてくれているんだと、嬉しくなりました」
鶴ヶ城の出来映えは、ここ何年の間でも出色だったという。
「手伝ってくれた会津若松市の子供や、わざわざ見に来てくださった福島県の方も、みな、『本物そっくり!』と驚いてくれました。瓦1枚1枚、雪で作った甲斐がありました」(鈴木曹長)
復興の願いが込められた名城は、会期中、最も多くのギャラリーを集めた。
※SAPIO2012年4月4日号