円高基調が続いていた為替相場だが、3月に入ってドル円相場は1ドル=84円台をつけるなどトレンドの変化がうかがえる。今年の為替はどう動いていくのか、為替のスペシャリスト、松田トラスト&インベストメント代表の松田哲氏が解説する。
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今年はどこかでドル安が底打ちしてドル高トレンドへの転換が起きると予想している。早ければ4~5月ごろ、遅ければ8~9月ごろではないだろうか。もっとも、その場合も相場転換の前に、もう一段、下落していく可能性が高い。現在の相場からじわじわと上昇していくのではなく、いったん底を打ってから、反転していくパターンになるのではないか。
底打ちのきっかけを作るのは、やはりアメリカだろう。もし米連邦準備理事会(FRB)が「QE3(量的金融緩和第3弾)」に踏み切れば、底打ちが完全に見えてくる。では、そこからトレンド転換してくる理由はなにか。FRBは2014年終盤まで超低金利政策を続ける方針を決めているため、日米の金利差によってドル/円が上昇するシナリオはない。となれば、アメリカの根本的な景気回復、生産力の回復によってだろう。
今年11月には大統領選も控えている。ドルが弱い時の大統領は再選されないというジンクスがある。現在、アメリカ政府はドル安政策をとっているが、最も大衆受けする「強いアメリカ(ドル)、強い株式」という政策に舵を切ってくると思われる。アメリカ国内で強烈な株高がやってくれば、対米投資も増え、ドルの需要も高まるだろう。
反転の目途として、86円が重要なチャートポイントとなる。86円を抜けたらトレンド転換してドル高円安方向に進むと判断してよいだろう。
86円を抜ければ、次の上値ターゲットとして95円、101円が見えてくるが、相場の上昇スピードは緩やかなため、今年はそこまで上昇する可能性は低いとみる。100円台に戻るには3年程度かかるかもしれない。
※マネーポスト2012年春号