中国大気汚染の原因をメディアは「大霧(濃霧)」と報じたが、在北京のアメリカ大使館がPM2.5だと暴露して話題となった。中国もここにきて改めてPM2.5問題として取り組みを発表した。PM2.5とは、ぜんそくや気管支炎を引き起こす微小粒子状物質のことである。だが、中国の環境問題への取り組みは、穴だらけだという。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。
* * *
約1週間の日程で行われてきた全人代(全国人民代表大会)が14日、閉幕した。毎年この時期は国内の諸問題が集中して話し合われるため、中国の現状を大雑把に理解するには最適な時期でもある。
なかでも中国社会が抱える問題を総括的に触れるのが総理の活動報告である。
今年、温家宝総理が行った活動報告の特徴の一つは経済の構造転換を力説したことであり、もう一つは民生問題への深い関心を示したことである。
なかでも昨年メディアを賑わせたさまざまな問題を取り上げて解決の目標を掲げたことで、そこには食品安全や環境問題が多く取り上げられた点だ。
そして、その一つがPM2.5の問題である。PM2.5とは、ぜんそくや気管支炎を引き起こす微小粒子状物質のことで、空気汚染を代表する物質である。
中国のメディアが「大霧(濃霧)」と報じたのに対して、在北京のアメリカ大使館がPM2.5だと暴露して話題となった大気汚染問題だが、中国もここにきて改めてPM2.5問題として取り組みを発表したのだ。
具体的には大気汚染の環境基準を厳しくして五月雨式に全国へと適用を広げるという対策であるが、そもそも基準となった〈環境空気質量標準〉はWHOの定める基準よりも緩く、また全国規模の実施は2016年1月1日からという中身なのだ。
これでは「濃霧」の発生の度に街中の小児科がパンクする現象は当分なくならないだろう。
この中国の大気汚染に対する新たな取り組みのニュースのなかで明らかにされたことで驚かされたのは、中国がこれから適用する新基準でさえ、現状では全国のおよそ3分の2の地域は不合格になると考えられていることだ。