3月6日のロシア大統領選挙で、プーチン首相が圧勝した。かつてプーチン氏に向き合ったことのある新党大地・真民主代表の鈴木宗男氏と、作家で元外務省主任分析官佐藤優氏が、氏の印象について語り合った。
――プーチン氏には、どのような印象を持っていますか。
佐藤:鈴木さんは、プーチンが2000年3月26日の大統領選挙で勝利した後、最初に会った日本人の政治家です。プーチンが当選後に最初に会った海外の政治家でもある。
鈴木:結果的にそうでした。その年の4月4日、クレムリンでお会いしました。当初は小渕(恵三)総理の特使で行くことになっていたが、小渕先生がその2日前に倒れられた。特使派遣がなくなるかと思ったら、次期総理の森(喜朗)先生から、「予定通り行ってくれ」と指示され、当時外務省にいた佐藤さんも出張先のイスラエルから駆けつけてくれましたね。
佐藤:あの時の会談は、日露首脳会談の日程を調整することが最大の目的でした。やり取りの中でのプーチンの様子を覚えていますか?
鈴木:プーチンさんははじめ、椅子の背にもたれながら、私の話を聞いていました。
佐藤:結構偉そうな印象でしたよね。
鈴木:まあ、私のほうが格下ですから。でも、その姿勢が途中で変わった。会談をしていた部屋は1年半前の小渕・エリツィン首脳会談の場所と同じだったんです。私が座っているところに小渕先生がいて、プーチンさんの席にエリツィンさんがいた。
私は、「1年半前のことが思い出される。そこにいた小渕首相は今、生死をさまよっている。私は今、ここに小渕首相がいるという思いで大統領と相対しております」と言って、ぽろっと涙をこぼしました。
佐藤:私もよく覚えています。鈴木さんが涙した後、プーチンが目に涙をためて、身を乗り出してきた。「あ、この人は人間の感情や心の動きに敏感な人だな」と思いました。
鈴木:そこですかさず、森先生の「4月29日からモスクワに行きたい」という意向を説明したわけです。
佐藤:プーチンは少し驚いた表情をしていましたね。やっぱり緊張していたんでしょう。大統領選当選後に初めて外国の政治家に会うわけですから。
鈴木:そうですね。ただプーチンさんはこちらの申し出を受け、ポケットから手帳を出しました。そして、「4月29日はサンクトペテルブルクでのアイスホッケー世界選手権に行っている。しかし、日本の次期総理が来られるのならば、そこでお出迎えしましょう」と言われた。プーチンさんは、諜報機関出身で神経質だとよく言われますけども、私は逆に人情の機微がわかる人だという印象を持ちました。
※SAPIO2012年4月4日号