朝日新聞の報じた「契約金問題」に対する読売新聞・巨人軍サイドの反応は、「犯人は誰だ?」ではなかった。
「やはり出てきたか、というしかない。あの人があちこちでマスコミと接触していたのは把握していたから……」ある読売グループ幹部はそういって顔をしかめた。
朝日が15日朝刊で報じた「上限超えの契約金」については、すでに詳しく報じられているので省くが、1997~2004年にかけて逆指名、自由獲得枠で入団した高橋由伸、阿部慎之助ら6選手の契約金が、当時の申し合わせの「最高標準額1億円」を大きく上回っており、超過分は複数年にまたがって支払われていたというもの。
「表向きは上限を超えていない形の契約にして、超過分は翌年以降に分割払いしている。逆指名や自由獲得枠による契約金・年俸を抑制する申し合わせの骨抜きというしかない」(ベテランスポーツジャーナリスト)
巨人軍の反論は苦しい。「あくまで標準額であり、上限額ではない」という弁解に終始し、金銭の動きそのものは「文書が球団に残っていないので確認できない」と答えるにとどまっている。
話を本題に戻そう。前出の読売G幹部が口にした「あの人」とは――。名指しされたのは、昨年11月に渡辺恒雄・読売G本社会長に対して「清武の乱」を起こした清武英利・前巨人軍球団代表だ。幹部がその根拠を語る。
「内容を見た瞬間にピンと来た。6選手の契約のうち、最新のものは野間口貴彦選手(2004年自由獲得枠)で、契約日は2004年7月。清武さんが読売新聞の運動部長から球団代表に異動したのは、同年の8月。自分が代表ではない時代の契約を暴露したとしか思えない」
ある読売G関係者はこんな指摘をする。
「この報道の標的は渡辺会長だ。巨人軍の場合、1億円を超える高額契約は読売G本社の代表取締役の事前承認が必要。つまり、6選手の契約問題は巨人軍にとどまらず、読売G本社の代表取締役である渡辺会長の責任であると匂わせている」
渡辺氏は「清武の乱」直後に、朝日新聞のインタビューに応じている(11月28日付朝刊)。そこで自ら、
〈巨人軍の定款には、本部長以上の人事や高額の契約、重要な事項については、読売新聞グループ本社の代表取締役の事前の承認を得るものとする、となっている。江川君の人事案というのはそれに該当する〉
とコーチ人事に口を出した「現場介入」の根拠を説明し、返す刀で〈清武が企業機密を漏らしたために会社に損害を与えた〉と清武氏を斬って捨てた。
「この渡辺会長の発言に、清武さんが怒り心頭になったのは間違いない。だから、あえて渡辺会長の発言を逆手にとって、“ならば、この問題は渡辺の責任だ”と批判する意図が見える。反撃の場を、会長のインタビューを掲載した朝日新聞にしたのも周到な計算だろう」(前出の読売G関係者)
渦中の清武氏に接触したところ、
「(朝日の記事には)全く関わっておらず、コメントできる立場にない」――そう語るのみだった。
※週刊ポスト2012年3月30日号