どのチャンネルに合わせても、やっていることは皆同じ……。ウンザリしてテレビの電源を切ってしまった国民も多かっただろう。
東日本大震災から1年を迎えた3月11日。国民が厳粛な気持ちで臨んだ一日にテレビ各局が用意した「震災1周年特番」は、鎮魂の思いを台無しにしてしまう低能ぶりだった。
本誌記者に怒りをぶつけるのは、石巻市の仮設住宅に住む被災者である。
「テレビはあまりにもバカ騒ぎしすぎですよ。私は3月11日の午後以降、見る気が失せたので、テレビはまったくつけていません。テレビをつけていると、やたら励ますような言葉ばかりが流れてきて、逆に落ち込んでしまう。被災者や遺族には、思い出したくないこともあれば、ただ静かに冥福を祈りたい時間がある。でも、テレビはそんなのお構いなしですから」
被災者の心情そっちのけで、自分勝手な“感動”を押し売りする番組作りは、視聴者にもとっくに見透かされている。
結局、各局の震災報道は「惨敗」に終わった。特番の視聴率は軒並み低迷。皮肉にも各局が震災1周年追悼式を中継するなかで独り勝ちをおさめたのは、震災特番を組まずに2時間ドラマ『銀座高級クラブママ青山みゆき』(再放送)を流したテレビ東京だった。同局のミステリー番組は普段6%台程度だが、この日だけは一気に9%台へと跳ね上がった。
悲惨だったのが、普段は10%台後半の好視聴率を叩き出すフジの人気番組『めちゃイケ』(10日夜放送)。出演者から被災者へプレゼントを贈るという中途半端で安易な震災企画は多くの視聴者からソッポを向かれ、視聴率はひと桁台にとどまった。
※週刊ポスト2012年3月30日号