「(捕手の)トレアルバがいなかったら10点ぐらい取られていた」
レンジャーズのダルビッシュ有(25)は、現地13日のオープン戦後に苦笑を漏らしながら会見を締めくくった。初回に連続四球で出した走者2人を、強肩のトレアルバが刺さなければ、何点入れられたかわからない乱調ぶりだった。
「こんな投球を続けたら、チーム内外の風当たりが強くなる」と、警鐘を鳴らすのは米誌スポーツライター。
球団による報道規制に反発する声が日増しに高くなっている。「本人取材は登板した日だけ。周辺取材にも限界がある」と、音を上げているのは大挙して渡米した日本のスポーツ紙の記者たち。球団フロント陣にアタックをかけても断わられ、なんとJ・ブレイク広報部長のインタビューを流したテレビ局もある。
そのブレイク氏、実は松坂大輔がレッドソックスに入団した時の広報部長。徹底した取材規制を敷き、日本メディアを頻繁に怒鳴りつけたことから「カミナリ・ブレイク」の異名を持つ。
「のほほんとした表情ながらタフな人物で、米メディアにもカミナリを落とす。日本人記者はそれを怖がって腰が引けているから、ダル取材は完全に球団ペース」(同前)
通常、MLBのキャンプでは全30球団共通の「ユニバーサル・パス」を取得すればどの球団でも自由に取材できる。だが、今季はそれに「ただしレンジャーズのクラブハウスは除く」の一文が付けられたほどだ。
が、2年連続でワールドシリーズ進出とはいえレ軍は“田舎球団”。メディアにフレンドリーな選手が多く、ダル入団で生じたピリピリムードを歓迎しない選手もいる。紅白戦で何度もサインにクビを振られた正捕手のM・ナポリは、かなり心証を害していたという。
「本人はメディアに“コミュニケーションが取れている証明”と大人の対応をしたが、旧知の記者やチームメートには不満をぶちまけていた」(米紙コラムニスト)
日本メディアが「同世代のよき理解者」と紹介した左腕エースのD・ホランドともギクシャク気味。
「キャンプ当初はキャッチボールの相手をしていたが、突然ダルが“今日は投げない”といったことから、身勝手な奴だと腹を立てたホランドは、それ以降は相手をしなくなった」(同前)
日本ハム時代の同僚・建山義紀は“ダルのニュースソース”扱い。先発復帰を熱望する上原浩治は、ダルの担当記者には挨拶も返さない徹底ぶりだという。
現在はドジャースのコーチを務める元日本ハム監督のT・ヒルマンは、「周囲が何をいおうと気にしなくていい。本人が謙虚であれば、問題は起こらない」とアドバイスするが、「雷のカーテン」に覆われたダルにその言葉は届くだろうか。
※週刊ポスト2012年3月30日号