民主党政権の体たらくは、自民党時代よりひどいといわざるを得ない。第90代、第92代の内閣総理大臣をつとめた安倍晋三、麻生太郎の両氏は、「今の民主党は政権党の体をなしていない」と怒り心頭だ。政治ジャーナリストの藤本順一氏が司会を務めた対談で経済のかじ取りと国家経営について二人は語り合った。
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麻生:経済用語で「合成の誤謬」というんだけど、例えば麻生太郎が酒をやめた、葉巻もやめた、ゴルフもやめた、選挙をやめたっていえば、それはオレの身体は喜ぶし、うちのカミさんも喜ぶよ。だけど1億2700万人が「せーの」で酒をやめたら、間違いなく飲み屋は全部つぶれて、ホステスも芸者もみんな失業して、街じゅう失業者だらけですよ(笑い)。だから諮問会議には民間人も入り、学者も入り、日銀も入り、政府側の人間も入ってやっていくわけだ。
安倍:そこで議論をすることで、日本としての目標を一致させていくことができるんです。ところが民主党はマクロ経済も考えずに、仕分けでバッサバッサと切っていっただけ。フランス革命が血を求めたように、血を流すことに喜びを見つけて、それが手段なのか目的なのかがわからなくなっていったのでしょう。
麻生:民主党は統治する側、権力側に立ったのなら、その自覚をもたなきゃいけない。権力っていうものは、おずおず、こわごわと使うもんですよ。いきなり刀を抜いてバッサリっていうやり方はいただけない。
安倍:民主党の人たちは、国家対市民、企業対消費者、経営者対労働者という対立型で世の中を考える。そして自分たちは常に要求したりクレームをつける側に立つ。しかし国家は経営しなければいけないんです。
麻生:それで結局うまくいかないから、諮問会議(国家戦略会議)も次官会議も復活させて、内閣法制局長官の国会答弁も要らないといっていたのに復活させた。それを見て「民主党は自民党化してる、全然違いがないじゃねえか」なんてマスコミはいうけど、俺にいわせれば全然違う。例えば、少なくとも自民党政権時代に日米関係がこんなに悪くなったことは1回もないよ。これほど景気が悪くなったこともない。
※週刊ポスト2012年3月30日号