野田佳彦首相は、原発再稼働に向けて原発のストレステストを行うという。しかし、ストレステストとはどんなテストなのか? 東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏はこう説明する。
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原発再稼働問題が焦点になってきた。野田佳彦首相は東日本大震災から1年の記者会見で再稼働問題について、こう述べた。
「最新の知見を踏まえ、ストレステスト(耐性調査)の妥当性を原子力安全委員会が確認する。私と枝野幸男経産相、藤村修官房長官、細野豪志原発相の4人で安全性を確認し、政府を挙げて地元に説明する。私がその先頭に立つ」(日本経済新聞、3月12日付)
ストレステストというのは電力会社がコンピュータで地震の揺れや津波の高さなど適当な数値を入力し、原発の安全性をチェックする試験だ。原子力安全・保安院が結果を評価し、原子力安全委員会が内容を確認する。野田は加えて、自分を含めた閣僚4人がさらに安全委の評価を確認して、自ら再稼働に向けて地元の説得に当たる方針を表明したのだ。
テストなら当然、合格もあれば不合格もあると考えるのが普通だろう。「原発をテストする」というのだから、不合格なら再稼働はないと思うのが常識的受け止め方だ。
ところが原発のストレステストはまったく違う。安全性を「調べる」のではなく「示す」のが目的なのだ。保安院は「住民に安全性を理解してもらうための材料」(東京新聞、2011年9月21日付)と説明している。「安全性をチェックする」と説明されれば、不合格もあると思ってしまうが、実は結論は初めから合格しかない。
ずばり言えば、これは国民をだます八百長、茶番である。テストという言葉を使って、あたかも不合格もあるかのように誤解させる。そのうえで首相が「安全でした」ともっともらしく確認する芝居を演じて、地元を説得する段取りである。それならテストなどと目くらましを言わず、「再稼働手続き」と正直に言うべきだ。
※週刊ポスト2012年3月30日号