リニア中央新幹線は東京~名古屋間を約40分で結ぶ予定で、現在の「のぞみ」の所要時間は約1時間40分だから、1時間短縮できるのは魅力だが、はたしてその需要はどれくらいのものか。大前氏は、そのルートの8割がトンネルの中であることに注目する。以下は、大前氏の解説だ。
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奈良と京都が中間駅の誘致合戦を繰り広げるなか、リニア中央新幹線は2014年度着工に向けて粛々と計画が進んでいる。しかし、先行して開業する東京~名古屋間については、果たしてどれだけニーズがあるのか、少々疑問である。
2027年開業を目指している東京~名古屋間の予定ルートは、神奈川県相模原市、山梨県甲府市、長野県高森町・飯田市、岐阜県中津川市が中間駅の候補地になっている。このルートだと、全体の8割くらいが南アルプスの下を通ることになる。
つまり、乗っている間はほとんどがトンネルの中で、東海道新幹線のように車窓から富士山や浜名湖などの景色を眺めながら駅弁を食べたり、缶ビールを飲んだりしてくつろぐことはできないのだ。最高時速500キロで真っ暗闇の中を突っ走ることに恐怖を感じる人もいるかもしれない。
リニア中央新幹線は東京~名古屋間を約40分で結ぶ予定で、現在の「のぞみ」の所要時間は約1時間40分だから、1時間短縮できるのは魅力だが、8割が地下というのは大きな弱点である。よほどせっかちな人や多忙な人以外はリニアを利用しないかもしれないし、新たな需要が急増するとも考えにくいのである。
※週刊ポスト2012年3月30日号