高齢者が生活や社会に対するホンネを綴った「シルバー川柳」。若い者には出せない渋い味わいと深~い笑い。込められた小さな毒さえ読む者をうならせる。
まず、全国有料老人ホーム協会が主催する「シルバー川柳」の入選作を3句。
●「アーンして」むかしラブラブいま介護
●誕生日ローソク吹いて立ちくらみ
●居れば邪魔出かけりゃ事故かと気をもませ
世の中の森羅万象を、核心を衝いた視点と短いウイット(機知)で、世界最短の五・七・五の詩形に結晶させた川柳。高齢者が詠むと一段と深い味わいがある。「朝日川柳」の選者・西木空人氏は過去の入選作にすべて目を通した。
「花鳥諷詠ではなく、人間諷詠の川柳は、大衆が楽しめる文芸。さすが長い人生経験があるシルバー世代です。若い人にはない洞察力、社会の一線を引いているからこその視点、人生に達観した境地だからこそいえる『おかしみ』が詠み込まれています。ユーモアやエスプリ、風刺の利いた作品は、懐が深くないと詠めません」
良くも悪くも、今の日本は高齢者が中心の社会。その視点は国の行く末をも暗示する。
「団塊の世代が定年を迎え、狭い企業社会のサラリーマン川柳よりシルバー川柳が注目を集めるようになりました。滑稽な自分を客観視して、自分自身を洒落のめす余裕を持っていたいというシルバー世代が詠み手になって、同時に読者にもなっています」(同前)
全国有料老人ホーム協会は毎年、敬老の日にあわせてシルバー川柳を募集している。第11回(2011年)までの応募総数は何と10万以上だ。
以下、過去の入選作のなかからとびきりの傑作選。
●飲み代が酒から薬にかわる年
●デザートは昔ケーキで今くすり
●体調の良い日は医者をはしごする
※週刊ポスト2012年3月30日号