奈良と京都が中間駅の誘致合戦を繰り広げるなか、リニア中央新幹線は2014年度着工に向けて粛々と計画が進んでいる。はたして、リニアの利用は新幹線や飛行機より有利なのか。大前研一氏は、リニアが得意とする距離は意外と幅が狭いという。以下は、大前氏の解説だ。
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現在、東京~大阪間の移動は飛行機が35%を占めており、私も大阪へ行く時は飛行機を利用している。飛行時間に空港までのアクセス時間を加えても、2時間半座りっぱなしの東海道新幹線より正味で30分ほど得をするからだ。うっかり寝ている間に新大阪を通過してしまう心配もない。
だが、所要時間が飛行機と同じ1時間となれば、ルートのほとんどがトンネル中で外の景色が見えなくても、雲の中を飛ぶ時の飛行機と変わりがないからリニアが優位だ。名古屋~大阪間の予定ルートを見ると、東海道新幹線のように米原(滋賀県)を経由するのではなく、直線的に伊賀(三重県)の山の下を通っているので、雪の影響も受けにくいだろう。
実は、東京~大阪間はリニアにぴったりの条件を満たしている。最高時速500キロのリニアが向いているのは500~1000キロの移動である。つまり、新幹線より200キロ速いだけの優位性では、342キロ(東海道新幹線の営業キロ)しか離れていない東京~名古屋間だと決定的な差にならないものの、553キロ(同)離れている東京~大阪間だと明らかな所要時間の違いが出てくる。
だが、都市間距離が1000キロを超えると飛行機が圧倒的に優位となる。たとえば1000キロだと、リニアは停車駅なしで飛ばして2時間かかるが、巡航速度が時速800キロの飛行機なら1時間余りだからである。リニアが得意とする距離は意外と幅が狭いのだ。
※週刊ポスト2012年3月30日号