企業の現場で、伸びない若手をどう育成するのか。作家で人材コンサルタントの常見陽平氏は、北方謙三氏の名ゼリフのような「言葉の張り手も必要」と唱える。
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突然ですが、皆さんは「試みの地平線」を知っているでしょうか?『ホットドッグ・プレス』(講談社 ・休刊)に連載されていた作家北方謙三先生による人生相談コーナーです。相談に対する返答、「ソープへ行け!」はあまりに有名でした。ここで言う、ソープとは水泳選手のイアンではないです。ランドです。
以前、このNEWSポストセブンに北方謙三先生のインタビューが掲載され、その際、先生は「ソープは行け!と言ったのは4回だけ」だと語っていました。うーん、がっかりしましたね。その10倍以上言ってます。
私の手元に『ホットドッグ・プレス』の500号記念号(2001年3月26日号)があるのですが、これによると、1986年の連載開始から2001年のこの号までに「ソープへ行け!」と言われた人は実に累計59人。連載が終了したのは翌年の6月10日号ですから、おそらく60人以上の人がソープへ行かされたことになるでしょう。
いや、中には「タクシーに乗って“堀の内!”と叫べ」(92年7月25日号)のように変形バージョンもありましたから、もっといるでしょうね。87年、88年のようにゼロの年もあれば、過去ギネスとなる98年の9人、92年、97年の8人など激しく多い年もありました。
だんだん定着してきて、連載後期には相談者も「先生は“ソープへ行って免疫をつけろ”とおっしゃるでしょうが・・・」(01年1月8日号)というように、言われることを予測してきた人もいました。定着していますね。
この「ソープへ行け!」という名台詞、かなりのトンデモ発言です。著名な作家がこんなことを連呼していたとは・・・。講談社で元ホットドッグ・プレス編集部の方に直接お伺いしたのですが、連載開始当初の先生は売れ始めた頃だったそうで、連載後期には大御所になっていたとか。最後の方は、この方にこういう内容の連載を持って頂けるなんて・・・という状態になっていたわけですね。
今なら大炎上ものでしょう。この連載において、恋愛ネタは質問の30%、性の悩みは12%をしめていたわけですが、そもそも生身の女性が苦手でこわくてたまらない子羊たちにソープへ行くことをすすめること自体がとんでもない矛盾ですよね。しかし、凄まじい張り手であることは間違いないです。
最近の職場の悩みといえば、若手人材の育成です。その背景には、若手を育てることのできる上司、先輩がいないことがあげられます。そして、パワハラだと言われるのがこわいなどの理由から、ついつい良い人ぶる上司だらけになることも。いや、パワハラは問題なのですけどね。
若者から慕われたよい兄貴、北方謙三先生のように、「ソープへ行け!」的な言葉の張り手、これも時には必要なのではないでしょうか。さらに、ソープ代を経費か自腹で払ってくれたなら最強ですが(さすがに、問題です)。愛のムチ的な言葉の張り手力、身につけたいところです。