国内

木嶋裁判 佳苗と互角に戦うひとまわり位年下の茶髪女性検事

木嶋裁判すべて傍聴の北原みのりさん

 出会い系サイトで知り合った男性三人を殺したなど容疑で、検察に死刑を求刑された木嶋佳苗被告(37歳)。彼女の裁判の傍聴を続けている文筆家で女性用アダルトグッズショップ「ラブピースクラブ」代表の北原みのりさんが語る「私が見た佳苗」。第二回をお届けする。(聞き手=ノンフィクションライター・神田憲行)

 * * *

——北原さんがそもそもこの裁判に興味を持った理由はなんですか。

北原:木嶋香苗被告がなぜそんなことをしたのか知りたかったから。彼女は祖父が町会議員で家庭的にも普通の環境、プログの文章もしっかりしているから全く無教養な人間というわけではない。男性への強い恨みのようなものも感じない。

 それなのになぜ彼女はそんな大胆な犯行に及んだのか(注・佳苗被告は一貫として無罪を主張)。彼女はいわゆる「援助交際」の走りのようなことをしていて、あの世代の女の人を作った社会が生んだ犯罪のひとつなのか、男女関係の象徴なのか、見てみたいと思いました。

——佳苗被告の動機のようなものは明らかになりましたか。

北原:全く。検察は論告求刑では「嘘がばれるから殺した」と言っているんですが、説得力がない。佳苗は嘘がばれても平気な人生を送ってきて、ばれても嘘を重ねればいいだけなんですよ。お金を返せといわれたら、他のターゲットから引っ張って返すか、逃げてしまえばいいだけの話なんです。

 しかも取ったお金は寺田隆夫さん(当時53歳)は一千万円越えていますが、大出嘉之さん(同41歳)は470万円、安藤健三さん(同80歳)さんにいたっては180万円でしかない。そんなお金はいくらでも返せたと思う。弁護人もその動機はないと否定するだけで、あたしたちの最大の関心事が置き去りにされている印象があります。

——北原さんの傍聴記(週刊朝日で連載中)を拝見すると、佳苗被告と検察官のやりとりが興味深いですね。

北原:佳苗はとにかく弁が立ち、切り返しも早い。寺田さんが1127万円を入れた通帳ごと佳苗に渡したことについて、検察が「(1127は佳苗の11月27日の誕生に通じることから)あなたのラッキーナンバーでしょう!?」と詰め寄ったら、佳苗は「ラッキナンバーってなんですか?」「あなたラッキーナンバーも知らないの」「ええ、知りません」みたいなやりとりです。

 主任検察官の男性はちょうど佳苗と同い年なんですが、彼らが古くさい、カビの生えたような結婚観や男女観で佳苗を追い詰めようとするたびに、彼女はスルリと身をかわしてしまう。男性が亡くなったあと佳苗が自分の妹を焼き肉に誘っていることに「人が亡くなったあとで焼き肉に誘いますか」と検察官が憤るんですが、別に好きでもない男性が亡くなったくらいなら、焼き肉に行きますよ。

 寺田さんとの別れ話を切り出した理由について、佳苗は「寺田さんからオジさんの臭いがした」といっている。検察はそれを「不合理な説明だ」と怒るんですが、女からすれば凄い合理的な説明なんです。オジさんのニオイがしてきて一瞬で嫌いになることってありますから。

 木嶋被告にかけられた容疑を審理するのがこの裁判の目的のはずなのに、いつのまにか主客が逆転して、検察側の古臭い倫理観や男女観がさらされて、佳苗の笑いものにされている印象があります。今のところ彼女と互角に戦えているのは佳苗よりひと周りぐらい歳下で茶髪の女性検事だけですね。

(第三回に続く)

関連キーワード

関連記事

トピックス

違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
「よだれを垂らして普通の状態ではなかった」レーサム創業者“薬物漬け性パーティー”が露呈した「緊迫の瞬間」〈田中剛容疑者、奥本美穂容疑者、小西木菜容疑者が逮捕〉
NEWSポストセブン
1泊2日の日程で石川県七尾市と志賀町をご訪問(2025年5月19日、撮影/JMPA)
《1泊2日で石川県へ》愛子さま、被災地ご訪問はパンツルック 「ホワイト」と「ブラック」の使い分けで見せた2つの大人コーデ
NEWSポストセブン
男が立てこもっていたアパート
《船橋立てこもり》「長い髪に無精ヒゲの男が…」事件現場アパートに住む住人が語った“緊迫の瞬間”「すぐ家から出て!」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《美女をあてがうスカウトの“恐ろしい手練手管”》有名国立大学に通う小西木菜容疑者(21)が“薬物漬けパーティー”に堕ちるまで〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者と逮捕〉
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で「虫が大量発生」という新たなトラブルが勃発(写真/読者提供)
《万博で「虫」大量発生…正体は》「キャー!」関西万博に響いた若い女性の悲鳴、専門家が解説する「一度羽化したユスリカの早期駆除は現実的でない」
NEWSポストセブン
江夏豊氏が認める歴代阪神の名投手は誰か
江夏豊氏が選出する「歴代阪神の名投手10人」 レジェンドから個性派まで…甲子園のヤジに潰されなかった“なにくそという気概”を持った男たち
週刊ポスト
キャンパスライフを楽しむ悠仁さま(時事通信フォト)
悠仁さま、筑波大学で“バドミントンサークルに加入”情報、100人以上所属の大規模なサークルか 「皇室といえばテニス」のイメージが強いなか「異なる競技を自ら選ばれたそうです」と宮内庁担当記者
週刊ポスト
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン
子役としても活躍する長男・崇徳くんとの2ショット(事務所提供)
《山田まりやが明かした別居の真相》「紙切れの契約に縛られず、もっと自由でいられるようになるべき」40代で決断した“円満別居”、始めた「シングルマザー支援事業」
NEWSポストセブン
新体操「フェアリージャパン」に何があったのか(時事通信フォト)
《代表選手によるボイコット騒動の真相》新体操「フェアリージャパン」強化本部長がパワハラ指導で厳重注意 男性トレーナーによるセクハラ疑惑も
週刊ポスト
1990年代にグラビアアイドルとしてデビューし、タレント・山田まりや(事務所提供)
《山田まりやが明かした夫との別居》「息子のために、パパとママがお互い前向きでいられるように…」模索し続ける「新しい家族の形」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【国立大に通う“リケジョ”も逮捕】「薬物入りクリームを塗られ…」小西木菜容疑者(21)が告訴した“驚愕の性パーティー” 〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン