出会い系サイトで知り合った男性三人を殺したなど容疑で、検察に死刑を求刑された木嶋佳苗被告(37歳)。彼女の裁判の傍聴を続けている文筆家で女性用アダルトグッズショップ「ラブピースクラブ」代表の北原みのりさんが語る「私が見た佳苗」。第三回をお届けする。(聞き手=ノンフィクションライター・神田憲行)
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——北原さんは女性向けアダルトショップを経営されていて、性的に関心が高い女性を毎日見てこられたわけなんですが、木嶋佳苗被告のようなお客さんはいますか。
北原:いないいない。彼女に必要だったのはバイブじゃなくてお金だったから。裁判で彼女の日常が明らかになったんですが、早朝に起きて一日に二回も三回もブログを更新して、三食作り、何十通も男性にメールしている。
検事から「あなたは仕事もせず、毎日お休みみたいなものでしょう」と言われて「私は毎日休んでいる感覚ではありません」と答えているんですが、実際に仕事のように男性たちと接触しているんですね。
亡くなった三人以外にも佳苗は男性にお金を振り込ませているのですが、誰も「返せ」とは言っていない。お金を振り込ませること自体至難の業だと思うのですが、振り込ませてしかも返せと言われないのは不思議なところで、みんな佳苗に「やらされている感」があるんです。
——「やらされている」とは?
北原:なぜか佳苗とかかわると、彼女中心になってしまうということです。男性もそう、裁判もそう、あたし自身もそうです。裁判の傍聴を始めてから3ヶ月間他の仕事は手につかない。今度は彼女の生まれ故郷の北海道に行くんですが、取材に「行く」というより「連れて行かれる」感じがあります。
——どっふりとはまっている。
北原:この間はついに編集者から「佳苗さん」て呼ばれました。テレビのリポーターからは「北原さんはこの事件に関わっているわけですが……」と言われてしまいました。関わってねぇし!(笑)。
「傍聴に行く」というと「出廷ですか」とか言われるし。しねーよ! どんどん自分と佳苗の距離が近づいてきている気がします。
(終わり)