「一人っ子政策」を進めてきた中国では今、男女人口比率のバランスが大きく崩れており、特に農村部と都市部では、男女比率の逆転現象が起きているという。中国の内情に精通する田代尚機氏(TS・チャイナ・リサーチ代表)のレポートだ。
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中国の2010年における男女人口比率は男性が51.27%、女性が48.73%である。これは女性100人に対して男性が105.2人の割合で、10年前の106.74人から比べると若干改善はしているが、依然として統計上は世界的にも男女比のバランスが悪いレベルといえる。しかも、これは全国平均であり、省によってはその差がさらに大きく、特に農村部でその傾向が強いとされている。
いうまでもなく、その要因は1979年に始まった「一人っ子政策」にある。子供を1人しか生めないのなら、将来自分たちの面倒を見てくれる可能性の高い男子を欲しがる傾向が強い。とりわけ農村部では、伝統的に嫡子を重視する考え方が顕著となっている。
もちろん産み分けは難しく、実際には女子とわかった途端に堕胎してしまうケースもあるため、自然の摂理から外れた男女比率となってしまうのである。
ところが、おかしなことに、都市部では女性の数が男性よりも多いという逆転現象が見られる。というのも、都市部には農村から女性が集まってきて戻らない一方、農村部出身の男性は都市部の学校に通ったり、仕事をしたりしても、やがて農村に戻ることが多いためだ。
そうなると、都市部では数少ない男性に女性が殺到するという状況が生まれ、実質「一夫多妻状態」になっている。もちろん、中国では重婚が認められておらず、誇張した言い方ではあるが、それでも資金力があって地位もある男性には多くの女性がアプローチしてくるというのだ。
その結果、都市部では、結婚できない(しない)女性が溢れることになる。
かたや農村部では限られた1人の女性を巡って激しい争奪戦競争が繰り広げられ、今や中国では、都市と農村との間で男女比の二極化現象が起きている格好だ。
中国では、都市と農村の所得格差が叫ばれて久しいが、それを解消しない限り、こうした異常事態に歯止めはかからないだろう。