阿部慎之助、高橋由伸ら6選手の契約金問題の巨人軍の反論を要約すればこういうことである。
1:ルール違反ではない
2:良い選手を獲得するため、それに見合った投資をするのは当然
前者は「苦しい言い逃れ」の感は拭えない。だが、後者は「善悪はともかく、考え方は理解できる」と思うファンは少なくないかもしれない。そこで本誌は「上限超え契約金は本当に見合った投資だったのか」を検証した。すると意外な結果が……。
算出方法は実にシンプルだ。各選手に巨人から支払われた年俸と契約金の総額を、巨人在籍期間の通算成績で割っただけである。今回問題になった二岡、高橋、阿部については、朝日新聞が報じた「上限超え契約金」の額を用いている。これでわかるのは、各選手の「コストパフォーマンス(CP)」だ。まずは二岡智宏(現日本ハム)と現在のレギュラー・坂本勇人の比較から。
■二岡智宏(1999年ドラフト2位、実働10年)
年棒+契約金=16億9100万円
安打:151万円(数字は1本あたりの金額。以下同様)
本塁打:1077万円
打点:328万円
■坂本勇人(2007年ドラフト1位、実働5年)
年棒+契約金=3億2900万円
安打:52万円
本塁打:451万円
打点:131万円
2人とも巨人を代表する大型遊撃手であるが、二岡の1本当たりの安打や打点は、坂本の約3倍のコストがかかっている。しかも高卒ルーキーの坂本は23歳と若く、契約金の“減価償却期間”が長い。5億円の契約金を10年間で“償却”してしまった二岡に比べるとCPの差は歴然としている。続いては外野手。
■高橋由伸(1998年ドラフト1位、実働14年)
年俸+契約金=40億5300万円
安打:262万円
本塁打:1388万円
打点:479万円
■松本哲也(2007年育成3位、実働5年)
年俸+契約金=8610万円
安打:43万円
本塁打: ―
打点:233万円
外野手の高橋は、安打1本分が、育成枠出身・松本哲也の約6倍。松本にはない高橋の魅力は本塁打だが、これも1本1388万円と目が飛び出るような数字となった(元巨人・松井秀喜は1本725万円)。
育成選手は、「契約時の支度金300万円+年俸240万円」で獲得できるので、高橋の本塁打1本で“2人の松本”を獲得できる計算となる。度重なる故障でここ数年は不本意なシーズンを送っている高橋は今年で37歳。今年こそ奮起しなくては“給料ドロボー”とのヤジを浴びかねない。最後はキャッチャーだ。
■阿部慎之介(2001年ドラフト1位、実働11年)
年俸+契約金=28億1350万円
安打:215万円
本塁打:1069万円
打点:365万円
■鶴岡一成(2008年トレード、実働4年)
年俸=1億3500万円
安打:169万円
本塁打:1929万円
打点:500万円
6人中で最高となる「10億円」の契約金が支払われたとされる阿部は、高橋よりはCPがいい。だが、昨年までの控え捕手・鶴岡一成(現横浜)と比較すると、やはり“高い買い物”である印象は拭えない。
本塁打のCPは2倍だから「打者」としての評価は合格点に見えるが、「捕手の評価は打撃ではなくリード。捕手としての阿部は鶴岡より下と見られていたため、毎年のように一塁コンバートが検討されてきた」(巨人番記者)と、数字に表われないマイナス査定もあり、阿部のCPはやはり決して誉められたものではない。
※週刊ポスト2012年4月6日号