回復基調にあるかのようにみえる日本株だが、これから本格的な反転攻勢に出るのかどうか、半信半疑の投資家も多いだろう。現在のような不透明な市場で勝ち抜くにはどうすればよいか、カブ知恵代表の藤井英敏氏が解説する。
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振り返れば、昨年はおそらく100人中98人の個人投資家が“仮死状態”に陥ったと思われる。ほとんどの人が「もう株価なんて見たくもない」と嘆き、苦しんでいることは想像に難くない。それは何も個人投資家に限った話ではなく、かつて有力なプレイヤーであったはずの証券会社の自己売買部門でさえ次々と撤退を余儀なくされ、もはや見る影もない。
明らかな急落局面や乱高下に見舞われているような状況なら儲ける手段も見えてくるだろうが、現在のように値幅も薄く、手の打ちようがない市場では、“ヘビの生殺し”のような状態に晒されるしかないのが実情だ。
それでも見方を変えれば、2%ほどのごく一握りの投資家は、このご時世でもしっかりと生き残っている。そこで残っているのは、どんなに劣悪な市場環境に見舞われようとも利益を叩き出せる高いレベルにある、いわば「偏差値70」の投資家だけなのだ。
ならば、逆境にめげず勝ち残っている彼らの投資法を、逆に利用してやれば、「勝ち組」への道も見えてくる。
加えていえば、ほとんどの投資家が負けるなか、勝ち残っているプロやセミプロ連中の投資手法というのは、それが際立っているだけに狙いが読みやすいともいえるだろう。
では、いったい彼らはどんなやり方で成功につなげているのか。私にいわせれば、彼らの動きは、「パブロフの犬」とほとんど変わらない。彼らは、たとえ何か有望な買い材料が浮上したとしても、日経平均の採用銘柄となるような大型主力株には目もくれない。有望テーマのド真ん中ではなく、そこから一捻り加えて、素人目には一見関連性の低そうな「小型株」に目を向け、一気に資金を集中させているのだ。
たとえば、1月に「首都高速が1兆円規模の大規模改修に乗り出す」と報じられたが、そうしたときには、大手の道路建設関連株に目を向けるのが王道だ。しかし、それでは値幅が薄いため、軽い値動きが期待できない。
であるならば高速道路を支える橋脚に強みを持ち、なおかつ震災の復興関連という材料も併せ持つ日本橋梁に注目か――プロやセミプロ投資家たちはそういった連想ゲームをしているのである。
景気がよくて、見通しが明るければ、何を買っても上がるが、現状では投資資金の行く先は限られている。苦境をどうにか凌いだ投資家の資金が逃げ込む先は、欧州危機の影響を受けにくい、ひいては外国人持ち株比率が低く、“外圧”によって売買されにくい小型株に目が向くのも当然だろう。
もちろん、小型株であるが故に、ひとたび買いが集中すれば大きく値は動く。ボラティリティ(変動率)が高くなるため、逆にあっという間に値崩れする可能性もあるが、その場合も、読みが外れれば、極力損失を減らすため、損切りという勇気ある撤退も辞さない。極端にいえば、何か事が起こりそうな時にいち早く「同じアホなら踊らにゃ損」という覚悟をもっている。
そんな「肉食系投資家」が跋扈するなかで利益をあげようとするなら、悠長に構えて「長期投資」や「分散投資」などといっている場合ではない。肉食系投資家たちが獲物を狙い定めた瞬間を見極め、同じ獲物に一気に攻め込むのである。
※マネーポスト2012年春号