ライフ

「食検定」ブームの人気の理由 口にするものの正体を探りたい

「パンシェルジェ検定」「BBQ検定」……検定ブームはフード業界でも賑やかだ。とはいっても、その背景には世知辛い世相がある。食事情に詳しいライター・編集者の松浦達也氏が解説する。

 * * *
 最近またも「検定」のまわりがにぎやかだ。といっても、事情は各検定ごとに悲喜こもごものよう。3月上旬には、明石特産の魚介類に関する知識を問う『明石・タコ検定』の休止が発表された。全国紙では「ご当地検定ブーム去り…」と見出しを打たれており、実際、市からの補助金廃止や受検者減少が理由のようだ。

 一方、人気に沸いているのが、「食関連」の検定だ。『食の検定』『食育検定』『料理検定』などの「食」ど真ん中の検定から、『BBQ検定』のようなシチュエーションに特化したもの。なかには『パンシェルジュ検定』『パンアドバイザー』など、カブっているジャンルもある。それほどまでに、現在「食」まわりの検定人気は高い。

 検定系コラムニストの石原壮一郎さんはその理由をこう語る。
「21世紀の日本は誰もが不安を抱えながら生きています。自分はちゃんと一人前なのだろうか、漠然と知って安心したいという願望があるのかもしれません。『自分の居場所を感じる』ことができるという効果はあるでしょう」

 食関連検定は芸能人からの人気も高い。3月15日にはアミーゴこと、鈴木亜美が『フードアナリスト』検定四級の取得をブログで報告。タレントの小倉優子もパンアドバイザーを取得している。そういえば、ミュージシャンの「ゆず」の二人も『BBQ検定』を受検し、見事インストラクター資格を得たという話も聞いた。趣味のフィールドのスキルを上げ、「資格」のような「形」を得ることで、いっそう日常の充実が図られるということかもしれない。

「例えばTOIECのような、あまり大まじめな資格検定になってしまうと、人間の価値が左右されてしまいます。『ご当地検定』のように、デキなくとも笑っていられるものは、ある種、社会のアンチテーゼのようなところもありました。そうした『隙間』が狭くなってきている、ある種の世知辛さを感じます」(石原氏)

 昨年の原発事故以来、誰もが「食」に対して敏感になり、口にするものの正体を気にするようになった。何かをひとつ知れば、その先も探りたくなるというのが人情というもの。「食検定」ブームの人気の理由はそんなところにあるのかもしれない。

 今年の9月にはサッポロビールにより、第一回「日本ビール検定」が行われる。さらには料理などの技能を審査する「家事チャレンジ検定」なる検定を、福井県が自治体としては全国で初めて立ち上げる。ちなみに福井県は「県内女性の余暇活動時間が全国42位と低く、仕事や家事時間は全国3位」と男性の家事参加比率が低く「男性の家事参加を促し女性のゆとり時間を増やすのが狙い」なのだとか。確かに世知辛い。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン
新政治団体「12平和党」設立。2月12日、記者会見するデヴィ夫人ら(時事通信フォト)
《デヴィ夫人が禁止を訴える犬食》保護団体代表がかつて遭遇した驚くべき体験 譲渡会に現れ犬を2頭欲しいと言った男に激怒「幸せになるんだよと送り出したのに冗談じゃない」
NEWSポストセブン
警視庁が押収した車両=9日、東京都江東区(時事通信フォト)
《”アルヴェル”が人気》盗難車のナンバープレート付け替えで整備会社の社長逮捕 違法な「ニコイチ」高級改造車を買い求める人たちの事情
NEWSポストセブン
地元の知人にもたびたび“金銭面の余裕ぶり”をみせていたという中居正広(52)
「もう人目につく仕事は無理じゃないか」中居正広氏の実兄が明かした「性暴力認定」後の生き方「これもある意味、タイミングだったんじゃないかな」
NEWSポストセブン
『傷だらけの天使』出演当時を振り返る水谷豊
【放送から50年】水谷豊が語る『傷だらけの天使』 リーゼントにこだわった理由と独特の口調「アニキ~」の原点
週刊ポスト
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
《英国史上最悪のレイプ犯の衝撃》中国人留学生容疑者の素顔と卑劣な犯行手口「アプリで自室に呼び危険な薬を酒に混ぜ…」「“性犯罪 の記念品”を所持」 
NEWSポストセブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《離婚後も“石橋姓”名乗る鈴木保奈美の沈黙》セクハラ騒動の石橋貴明と“スープも冷めない距離”で生活する元夫婦の関係「何とかなるさっていう人でいたい」
NEWSポストセブン
原監督も心配する中居正広(写真は2021年)
「落ち着くことはないでしょ」中居正広氏の実兄が現在の心境を吐露「全く連絡取っていない」「そっとしておくのも優しさ」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
〈山口組分裂抗争終結〉「体調が悪かろうが這ってでも来い」直参組長への“異例の招集状” 司忍組長を悩ます「七代目体制」
NEWSポストセブン
休養を発表した中居正広
【独自】「ありえないよ…」中居正広氏の実兄が激白した“性暴力認定”への思い「母親が電話しても連絡が返ってこない」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(時事通信フォト)
「うなぎパイ渡せた!」悠仁さまに筑波大の学生らが“地元銘菓を渡すブーム”…実際に手渡された食品はどうなる
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン