大阪府立和泉高校の卒業式で、〈国歌斉唱の際、起立だけではなく、教職員が本当に歌ったかどうかを校長が口の動きで確認していた〉(3月13日付読売新聞)と報じられると、行きすぎた教員監視の象徴として、中原徹校長(41)は大きな批判を浴びた。だがそれらの報道に校長は反論する。以下、校長の証言だ。
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国歌の起立斉唱は大阪府の条例で決められたこと。教育行政職員である学校の先生が、議会が制定し、最高裁も適法だと認めているルールを無視してよいなら、条例の下位規範である学校の校則を生徒に守るよう教育する資格などありません。
大阪府教育委員会の通達を見ると、「起立と斉唱」と分けて書いてありました。しかし本当に確認しようと思ったら、国歌斉唱の時に教師一人一人に近づいて、凝視して確認しなければならない。そんなことしたら卒業式が台無しです。
府教委に相談した上で、僕は最前列で国旗に向かって歌っているので、教頭がそっと向きを変えて、生徒が気づかない程度に遠目で5秒ほど確認することにしました。明らかに下を向いて歌っていない先生が3人いたことがわかったので、校長室に来てもらうと、うち2人は「歌っていた」といい、もう1人は「今まで歌ってこなかったし、今回も立てばいいのかなと思った」と。
数日後、その先生は、「今度からはちゃんと歌います」というので、校内ではそれで終わった話なんです。それをメディアが「口元チェック」といって、学校側に一人でも多くの不斉唱を出そうとする意思があったかのように報道した。
※週刊ポスト2012年4月6日号