運用年金資産約2000億円を消失させたAIJ問題に揺れる日本。その日本が公的年金(国民年金、共済年金、厚生年金)も企業年金も含めた年金資産の運用でやるべきは、実績をあげている海外の年金ファンドを分析し、それを参考にしながら投資していくことであると、大前研一氏は指摘する。以下は、大前氏の解説だ。
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海外には、きちんと情報開示を行ない、運用も成功している例がいくつもある。
たとえば、ノルウェーの政府年金基金は、ノルゲスバンク(ノルウェーの中央銀行)がソブリン・ウエルス・ファンド(政府が出資する投資ファンド)として運用する世界最強の年金ファンドだ。
シンガポールの外貨準備を運用しているGIC(政府投資公社)や政府系投資会社のテマセク・ホールディングスも、過去20年間で10%以上の高い運用成績で知られている。
カナダの各州の年金ファンド、アメリカ最大の公的年金基金カルパース(カリフォルニア州公務員退職年金基金)なども、常に世界中の投資機会に目を凝らし、高いパフォーマンスを維持している。
日本が公的年金(国民年金、共済年金、厚生年金)も企業年金も含めた年金資産の運用でやるべきは、せめて前記のノルゲスバンク、GIC、テマセク、カルパースくらいはウォッチして分析し、それを参考にしながら投資していくことである。
※週刊ポスト2012年4月6日号