取材で訪ねた常円寺(福島・福島市)は雪景色だった。
「放射性物質は今も雪のように降っている。雪は綺麗で溶けてしまうが、放射能はずっと消えない」
車で5分ほど走った場所に通学路があった。阿部光裕住職(48歳)は路肩に線量計を置いた。警告音が鳴り響き、液晶画面の数値は47マイクロシーベルト毎時を超える。
「50、60という場所もざらにある。子供たちには灰色のゼオライト(吸着剤)を撒いてあるところはホットスポットだから近づかないよう言ってあります。早急に除染しなくてはなりません」
阿部住職を動かすのは危機感だ。
「花に願いを」プロジェクトを立ち上げ、ひまわりなどの植物で土壌のセシウムを吸い上げようと計画。測定機関で緻密な検査を行ない、効果を実証しようとし、手押し車に線量計を付け、データを測定して回る。ホットスポットを集中的に除染すれば、根こそぎ土を取り除かなくても線量は下がる。
「除染が進まないのは仮置き場が決まらないから。寺の敷地に除染土を預かっていますが、20トンを超えました。保管用のプラスチック製ドラム缶も開発した。行政は分厚い書類を作るばかりで動かない。自分でやるしかない」
※SAPIO2012年4月4日号