経済見通しをふまえたうえで先読み資産防衛術を紹介するマネーポストの好評連載「森永卓郎のサバイバル資産防衛術」。森永氏は2012年の日本景気については、比較的良好に見ているという。
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今年の日本の景気動向については、私はポジティブに見ています。1次~4次の補正予算、および来年度予算を合わせて18兆円の復興予算が組まれ、これがこれから執行されていくことで、当面は景気失速の可能性がなくなったと思っています。
野田政権が強引に進める消費税引き上げが、もし決まったとしても、第一段のアップは2年後。まだ2年間は消費増税の影響は受けないので、今年は復興需要が経済を下支えして、日本経済は緩やかな回復基調がみられると考えています。
ただし、懸念材料はあります。欧州の金融財政危機と超円高です。
まず、今が正念場にきている欧州の金融財政危機ですが、これは米国の格付け会社をお先棒として世界の投機資本が意図的につくりだした、まったくもってインチキなものであることが明らかになっています。
例えば、2011年の基礎的財政収支の対GDP(国内総生産)比をみると、欧州の財政はそれほど悪くないことがわかります。ユーロ圏全体では収支均衡で財政赤字は出していません。今、投機資本の矛先が向けられているイタリアに至っては、1.8%の黒字なのです。
それなのに、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の格付けでは、イタリアは投資不適格寸前のランクに、ポルトガルは既に投資不適格のランクまで格下げされてしまっています。本当の財政状態と格付けがまったくリンクしていない。
それでも、根拠はなくても不安を煽られて投資家みんなが売りに向かえば、ギリシャのようにやられてしまう。現状では、イタリアやフランスまでもが標的になっていますが、そもそもインチキなので、この不安定要因は収束に向かい始めるとみています。
(連載「森永卓郎のサバイバル資産防衛術」より抜粋)
※マネーポスト2012年春号