先進医療のロボット支援前立腺全摘除術が、4月1日より保険適用になる。これまでは全額自己負担で約140万円もかかる治療だったので、患者にとっては朗報だ。とはいえ米国製ロボット「ダヴィンチ」の国内台数は昨年30台を超えたばかりで、経験を積んでいる病院は多くない。その中で2008年に導入した藤田保健衛生大学病院は100例以上の実績を持つ。
ロボット手術といっても自動的に機械が手術するわけではない。4本のロボットアームに内視鏡や超音波メスなどを装着し、患者の体内に挿入。別ユニットのコンソールに座る執刀医が、内視鏡から送られる3Dハイビジョンの画像をビューワで見ながらコントローラを操作すると、その通りにアームが再現するという仕組みだ。同院泌尿器科の白木良一教授は語る。
「内視鏡は最大15倍まで拡大でき、しかもビューワ内の画像は立体的なので、処置している所に自分の目があるかのような感覚です。人間の指が5cm動いても手術器具は1cmしか動かない。指先の震えもロボットが取り除いてくれる。ある意味で人の手より精度が高いんです。前立腺はいかに緻密に神経や血管を温存できるかが術後の排尿・性機能に影響するため、精度がとても重要です」
前立腺摘出後、膀胱と尿道をつなぐため、針を返しながら細かく縫っていく様子はまさに「神の手」。
「開腹手術の出血は平均500~600ccですが、ロボット手術では100cc程度。大きく切らないので術後の回復も当然早く、2日目で歩け、7日目に退院できます」(同前)
米国ではすでに前立腺がん根治手術の90%がロボット手術。保険適用を機に同病院では積極的に患者に勧めていきたいという。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2012年4月6日号