なまりや方言が出ると“田舎者と思われる”と考え、進学や就職での環境の変化を機に、標準語を話すようになる人も多いが、最近では“方言萌え”や“モテる方言ランキング”がネットで話題になるなど、今や方言はポジティブな要素となっている。聞き慣れないイントネーションは新鮮だし、方言で話されると“心許してくれている”“リラックスして、しゃべっているんだな”とキュンとする――といったことが背景にあるようだ。
TV番組ではテレビ埼玉を中心に2010年10月~12月と2011年4月~6月にローカル各局で放送された「方言彼女。」は、各地の美少女が方言で告白したり、遅刻に怒ったり、遅刻して謝ったり……と、“方言萌え”派にはたまらないプログラムだろう。
また全国区で認知度の高いコンテンツとしては、トヨタ『PASSO』のCMシリーズ。フランス語のように聞こえる「津軽弁編」や、宮古方言で膝枕を表す「ムムマッファ編」は夕方のニュースなどが、その意味を現地レポートしたほどだ。シリーズ第3弾で現在もオンエア中、長崎のわらべ唄を使った「でんでらりゅうば編」は出演している仲里依紗と川口春奈が共に長崎出身というエピソードも加わり、大きな話題となっている。
歌詞は「でんでらりゅうば でてくるばってん でんでられんけん でーてこんけん こんこられんけん こられられんけん こーんこん」と耳慣れない語感で、まるで呪文のようにも聞こえる。しかし、一度意味がわかるとイメージしやすく、特徴的な濁音の多い前半の語感がむしろ軽やかな印象で耳に残る。
こうした方言や地域に根づいたわらべ唄は、文化として大切にする側面だけでなく、人をつなぐ力がある。違う地方の人との会話で珍しい方言が話を盛り上げたり、仕事のシーンでふいにこぼれた方言から、出身が近いことがわかってお互いに親しみが生まれる――といったケースは多い。コミュニケーションに大きな役割を持つ「言葉」の中で、方言は人と人とを近づける特性を持っているといえるだろう。