日本株式市場は今年に入って10%以上もの上昇を記録したが、その原動力のひとつが外国人投資家だ。彼らが買いに転じた理由は何か、海外マネーの動向に詳しいパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズの宮島秀直氏が解説する。
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昨年、世界の主要国の株式市場の中で取り残されていた日本株。しかし、2012年に入ってからは海外投資家からの資金流入が続き、年初来からのパフォーマンスでは米国などを抜いて、出遅れ修正の動きを見せた。
この年初の買い手は、マクロ経済指標の分析をベースにトレードをする「マクロ型ヘッジファンド」や、CTA(コモディティー・トレーディング・アドバイザー)と呼ばれる、商品先物を中心とした指数先物売買に特化した投資家たちと見られている。買いの矛先は、日経平均先物などの株価指数先物に向かい、出遅れていた大型株の株価水準を修正する原動力となったようだ。
当面、世界の株式市場は、ユーロ圏における金融市場のマネー流動性増大や金融機関の資本増強に加え、米国経済の好転などで、堅調な展開が続くと想定されている。果たして、水準訂正がひと段落した日本株は、世界の株式市場に後れず、年初の上昇基調を維持できるだろうか。
パルナッソス・インベストメント・ストラテジーズでは、欧米の大手機関投資家(169社)に取材及びヒアリングを継続して行なっているが、最近のリサーチ結果から海外投資家の日本株に対する見方を分析すると、興味深い事実が浮かび上がってくる。
まず、日本経済に対しては「再評価」をしている投資家が多い。
2011年は、さまざまなダメージが日本経済を襲った。東日本大震災、ユーロ危機、タイの大洪水、歴史的な円高など、ネガティブな出来事が次々と起きてしまった。しかし、日本経済は持ちこたえ、景気が底割れすることはなかった。海外投資家は、改めて、日本経済の底力を確認したのである。
海外投資家が重視する株価指標のひとつに、EPS成長率がある。1株当たり利益の成長率を前期比パーセントで表わした数値だが、海外投資家は2012年の日本企業のEPS成長率を22%と予想している。これは、米国の13%、欧州の11%、エマージング諸国の13%を抜いた主要国ではトップの数字で、日本経済および日本企業への評価がうかがわれる。
EPS成長率の予想には、震災に対する復興事業の本格化や米景気回復期待が前提となっているようだ。いったん水準訂正はしたものの、日本株のバリュエーション(企業価値への評価)は依然として割安に放置されていると海外投資家は考えている。
※マネーポスト2012年春号