省エネといわれると冷暖房の節約を意識する人が多いだろうが、実態は必ずしもそうではないのだという。東京理科大学理工学部建築学科の井上隆教授はこう解説する。
「省エネといえば冷暖房を意識する人が多いと思いますが、日本の一般住宅におけるエネルギー消費量の割合は、寒冷地を除けば、給湯が39%、暖房は24%、冷房は2%にすぎません。そのことを認識している家庭は少ないんです」
平成20年度版環境白書にある「家庭におけるエネルギー消費の実態と認識のかい離」(引用元:井上研究室建築学会大会論文)というデータを参照すると、エネルギー消費量の割合について、給湯が16%、暖房が40%、冷房が30%と認識されているのだという。
しかし、その実態は井上教授のコメントにもあるように、給湯が39%、暖房が24%、冷房はたったの2%。つまり、冷暖房は思っている以上にエネルギー消費が少なく、給湯には想像以上にエネルギーが使われているのだ。ということは、給湯時の節約が効率的な省エネにつながることとなる。
井上教授らの給湯器の消費実態調査によると、日本の一般家庭では、1日に平均50回ほど給湯器を作動させ、その7~8割はわずか30秒以内。お湯を出そうという意識ではなく、水を出すつもりが、蛇口の仕組みで給湯器を作動させてしまっているのだという。
その原因となっているのが、レバーの中央部では水とお湯が混ざってしまうシングルレバー混合栓という蛇口の構造にある。水が出る範囲をきちんと理解して使用したり、構造改良された「エコシングル水栓」(TOTO、3万4125円~)などに替えると、キッチンの場合で家族4人あたり年間約7700円(水道代約1758円、ガス代5974円)削減できる(TOTO調べ。『関東学院大学 大塚雅之教授他:節水・節湯型シングルレバー型水栓の開発とその効果 その1.実験室での被験者実験結果の検討2009年度日本建築学会関東支部研究発表会』より引用)。
通信費・光熱費は毎月払うもの。ちょっとした工夫をするだけで、年間にすると大きな節約につながる。家庭でできることはまだまだありそうだ。
※女性セブン2012年4月12号