身近なデータから隠れた景気サインを読み解く“景気予測の達人”として知られるのが、三井住友アセットマネジメントのチーフエコノミスト・宅森昭吉氏だ。宅森氏によると、2012年は、米大統領選や各国の指導者交代など、世界的に景気を押し上げるイベントが目白押しだというが、その他にも様々な景気改善サインがあるという。
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見逃せないのはロンドン五輪。過去にも夏期五輪は世界経済に好影響を与えている。1987年からのOECD諸国の実質GDP成長率をみると、夏期五輪開催年はほとんど前年を上回っている。日本も同様に、過去13回(不参加のモスクワ大会をのぞく)中11回が景気拡張局面だ。特にメダルが多い年は景気拡張が長く続く傾向にあるので、日本勢の活躍に期待したい。
国内では、震災からの復興特需に注目だ。復興関連費を盛り込んだ補正予算の経済効果はこの春から本格的に現われてくるだろうが、復興特需を支えるのは公共投資だけでない。消費の主役となる国民のマインドにも、昨年後半から明るい兆しが見えているのだ。
たとえば、年末に公募で選出される「今年の漢字」。例年、景気が悪化したり、マインドが冷え込んでいるとネガティブな漢字が選ばれる傾向にあり、阪神大震災の1995年は「震」、新潟県中越地震の2004年は「災」だった。これらの年とは対照的に、昨年は圧倒的な得票で「絆」が選ばれた。しかもベスト10のうち「助」「支」など、7つがポジティブな漢字が占めており、一丸となって日本再生を目指す国民心理の現われといえるだろう。
また、家族の絆を描いたテレビドラマ『家政婦のミタ』、逆境にも明るさを失わないヒロインを描いた『おひさま』がヒットしたのも良いサインだ。
芦田愛菜ら人気子役が歌う『マル・マル・モリ・モリ!』のヒットにも明るい兆しが見える。過去にも子どもの歌がヒットした年はほとんどが景気拡張局面だ。子どもが欲しがるCDを買える余裕があるのは、消費者マインドが好転しているなによりの証拠といえる。
※マネーポスト2012年春号