放射能汚染への不安が、風評という形でいまだ多くの人たちを痛めつけている。風評被害は被災地だけにとどまらない。
あの福島第一原発の悲惨な様子を報道で目にした海外からは、日本全体が放射能に“汚染”された国と見られることもある。現在も16か国・地域が日本産食品の輸入を全面、または一部停止中だ。
日本への外国人観光客が激減し、痛手を負っているのは京都だ。江戸末期から続く京都の老舗旅館「松葉家旅館」は利用客の9割以上がアメリカ、フランス、オーストラリアなどの外国人だが、震災直後の3、4月は予約の95%がキャンセルとなった。
「SARS(重症急性呼吸器症候群)や鳥インフルエンザなど過去の災害の何倍もキャンセルが出て部屋はガラガラでした。通年で見ても、お客さんは例年の半分近くまで落ち込みました」(代表の林俊一さん)
昨秋から客足は戻りつつあるが、まだ例年に及ばない。現在、同旅館に宿泊する外国人に外から見える日本の姿を聞いた。
「震災時は日本の情報が不明瞭で不安でした。とても訪日する気になれなかった人も多いと思う」(オーストラリア人男性)
「友人は放射能の影響をすごく心配したけど、東京で働く息子が『大丈夫だ』というので来ました」(アメリカ人女性)
松葉家旅館が加盟する外国人向けの日本の旅館団体(ジャパニーズ・イン・グループなど)は震災後、直接予約に限り宿泊料金を割引するなどの『復興支援プラン』を打ち出した。松葉家旅館もスマートフォン限定の英語バージョンHPを立ち上げるなど工夫を重ね、客足を呼び戻そうとしている。
「円高の影響もあり現実は厳しいですが、“暇なときは暇でええやないか”と、のんびりお客さまをお待ちするようにしています。旅館はゆっくり気を休めるところ。私たちが不安になっては、それこそ風評に負けたことになります」(前出・林さん)
※女性セブン2012年4月12日号