いよいよ熱いペナントレースの火蓋が切って落とされた。贔屓にしているチームの勝敗が気になるが、それを左右するのはひとえに監督の采配次第。どの監督も、大きな不安を抱えているようで……。
横浜の中畑清監督は、オープン戦からずっと“広報担当”に徹している。
「キャンプでは練習メニューの作成、オープン戦ではオーダーから投手起用まですべてを高木豊・ヘッドコーチに任せきり。それでもオープン戦は貯金5の首位で終えた。まずはうまくいっているというところでしょう」(横浜番記者)
最大の収穫は、6年目の梶谷隆幸が12球団トップの13盗塁をマークし、1番打者のポジションを確保したことだろう。オールスターまで勝率5割キープを目標に掲げる中畑監督にとって、1番・梶谷が出塁した後、どう点に結びつけるかがポイントになる。盗塁か、エンドランか、バントか―しかし中畑野球では、すべて「結果オーライ」で処理される。
例えばオープン戦初戦の巨人戦。出塁した梶谷が盗塁に成功し、森本稀哲が繋いで1死三塁とチャンスを広げた。だが、その直後の中畑監督の一言は、「あれ、(サインは)盗塁だったんだっけ?」。ベンチはずっこけたという。
こんな調子だから失敗も多い。エンドランをかけ、相手二塁手がベースに入ったところへ打者のセンター返しが飛び、ダブルプレーに取られると、監督は、「サインを出すタイミングを間違えた。ごめん」こういって試合後のミーティングで選手に頭を下げる。従う選手たちの気持ちは複雑だ。
「当初は20歳の国吉佑樹を開幕投手と発表していたが、友利結・投手コーチに“国吉は経験がない。昨年チーム最多勝の高崎(健太郎)で”と進言されると、“そうだね、阪神戦は野次も多いし”とすぐ翻意した。これも結果オーライになればいいですが、そううまくいかないでしょう」(前出の記者)
新人監督で対照的なのは理論派で鳴らす日ハム・栗山英樹監督だ。就任後に掲げた“流線型打線”は、信奉する故・三原脩監督の持論を踏襲したもの。「2番打者最強論」に立ち、稲葉篤紀を2番に起用、オープン戦のチーム打率は12球団ダントツの.284だった。一方で、選手の長所を褒めて鼓舞する手法も「三原流」。
「猫なで声で“君たちが頑張ってくれなきゃ”と選手に話しかける。しかし、斎藤の開幕投手指名が明らかにフロントの意向に沿った方針というのはミエミエで、選手からは不満が多い。もう三原流は崩れつつある」(ベテランスポーツジャーナリスト)
白鴎大に教授籍を残していることを知っている選手は、斎藤の開幕投手について、「どうせ論文を書くときの材料にでもするつもりなんじゃないの」と冷ややかに見ている。それを知ってか知らずか、最近は自虐ネタも飛び出した。
「今年の目標は5回の退場。だってオレはいらないでしょ。コーチも選手もしっかりしてるから」
※週刊ポスト2012年4月13日号