震災から1年経っても進展を見せない復興事業。その裏で各省庁は復興予算獲得に血道をあげるばかりか、その補助金を、自らの天下り財団に流そうとしている。それらの財団の中には、枝野幸男氏や蓮舫氏が華々しく活躍した事業仕分けでやり玉に挙げられたものもある。
事業仕分けに民間仕分け人として参加した水上貴央・弁護士は嘆息する。
「どの省庁でも、天下り財団の傘下に業界組合を置いて補助金を餌にまとめるというスキームは常套手段として使われている。これらの天下り財団法人が近年、新公益法人制度に移行していることも根を深くしている。以前よりも民間企業に近い法人格となったので、一度補助金が流れてしまえば、どう使おうと、天下りがあろうと、厳格にチェックすることができなくなっている。役人は既得権益を守るために必死だから、潰しても潰してもゾンビのように復活する」
本誌はかねてより、事業仕分けが財務省の仕掛けたパフォーマンスに過ぎず、実際には財政削減に結びつかないことを指摘してきた。財務省に担がれた枝野氏や蓮舫氏、そして彼らをチヤホヤした新聞・テレビは、この実態に知らん顔することはできない。
これも本誌は指摘してきたことだが、消費増税を進めたい財務省は復興予算を青天井にして、「年度内に使い切ってしまえ」と各省庁に大盤振る舞いした。予算が余ると増税の根拠を失うからだ。そこにシロアリのごとき官僚たちが群がってきたというおぞましき光景である。
たとえば、経産省管轄の独立行政法人で、同じく天下り批判を浴びている中小企業基盤整備機構にも、震災復興の「中小企業支援策」として補助金が流されている。
財務省が「二重ローン対策」のため3月に設立した「東日本大震災事業者再生支援機構」(所管は金融庁)は、すでに被災県ごとに対策機関が設立されていたため、“二重”二重ローン対策機関と揶揄されている。これが他省庁からは「新しい天下り先ができた」とうらやましがられているのである。
「今回の復興予算は、先に金額が決まってしまったため、どこの団体に配るかについて、それぞれの官庁が自由にグリップを利かせることができるようになった。交付先の団体を指定するという構図は、厚労省だけでなく、他の官庁の予算でもかなりあるのではないか」(前出・水上氏)
カネの匂いを嗅ぎ分け集るシロアリの貪欲さと執念には寒気がする。今も30万人以上が避難生活を続ける大震災さえ、奴等には“メシのタネ”にしか見えていない。
●レポート/福場ひとみ(ジャーナリスト)と本誌取材班
※週刊ポスト2012年4月13日号