埼玉県所沢市の藤本正人市長(50)が、航空自衛隊入間基地近くにある同市立狭山ヶ丘中学校にエアコンを設置するための防衛省補助金7000万円(平成24年度分)を「冷房がなくてもやっていける」と辞退したことが物議を醸している。
この補助金は基地からの騒音を防止するためのいわば“地元対策費”にあたるわけだが、これを受け取らず、あえて汗を流すことを選んだ市長に、狭山ヶ丘中学校関係者のみならず、多くの市政関係者が反発しているのだ。
「橋下徹・大阪市長に自身を重ね合わせたパフォーマンスじゃないか」
「最近の夏の暑さは異常。防音という名目もあるのに導入しないのは子供の勉強への意欲を削ぐ」
といった声が相次ぐ。
しかし、藤本市長は、
「騒音は沖縄と違ってしょっちゅうではない。窓を開けても声は通るし、扇風機も入るので授業はできる。学校は狭山丘陵の森の中にあるので涼しい。子供たちには悪いが、勉強ができないほどの限界なのかきっと分かってくれると思います」
との説明を繰り返している。藤本氏は、所沢市で育った元野球少年で早稲田大第一文学部卒業後、国語教師として市内の中学校やニューヨークの日本人学校で教鞭をとった。所沢市議、埼玉県議を経て昨年10月の市長選を僅差で勝利し現在に至る。
市議会関係者が語る。
「市長選は無所属、自民推薦で戦い、現職の民主推薦候補を1600票差で破った。民主党批判が高まった時期の、いわゆる敵失に乗じた勝利だったから、今後の市政運営を踏まえても、ここらで前職市長がつけた補助金をあえて拒否して、内外に広く自分をアピールしておきたいという計算はあったでしょうね」
平成24年度分予算については、市長の独断が通った形だが、翌年度に予算計上すれば補助金はつくので、説明会や議会での議論は当分続きそうなのだという。
※週刊ポスト2012年4月13日号