日本選手権7連覇を誇った新日鉄釜石ラグビー部の後身チーム「釜石シーウェイブス(SW)」と釜石市民は、震災後の道のりを二人三脚で歩んだ。
“あの日”以後、試合や練習を自粛したSWの選手は、ボランティアに勤しんだ。高齢者を車イスごと持ち上げて運び、重い支援物資の箱を軽々と搬入する姿を見た被災住民は、口々に言った。
「いつから練習始めるんだ」「こんな年だからこそ勝ってくれよ」。
ファンの呼びかけは“衝撃的”だったとフランカーの江幡誠弘選手は語る。
「ラグビーどころではないと思っていたので……。やるしかないな、と燃えましたね」
市民に後押しされ、10月23日、震災後初となったホーム公式戦を34対19で勝利した。試合後の観客席には新日鉄時代からの応援シンボルである大漁旗がはためき、目頭を押さえる人も多かった。
6勝3敗で終えた特別な昨季をナンバーエイトの須田康夫選手が振り返る。
「毎試合後、釜石市民からは『頑張れ』ではなく『一緒に頑張ろう』と言われ続けました。チームとファンが一丸となり、来季も一緒に頑張りましょう」
※SAPIO2012年4月4日号