野田政権は経済産業省の下に置かれた原子力安全・保安院と内閣府の原子力安全委員会を一体化して、新たに環境省の下に原子力規制庁を設置しようとしている。その裏側を、東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏が解説する。
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そもそも原発を推進する経産省の支配下に規制を担当する保安院があったことが事故の遠因である。役人はいつも上を見ているから、役所の大方針に逆らうような規制ができるわけがない。だから「今度は環境省の下に置けば大丈夫」というのが政府の言い分なのだが、そんな小手先の手直しですむ話なのか。
環境省の下に置かれたところで、実際には経産省から役人が出向してくる。出身官庁に戻らないノーリターンルールがあると言ったって、わずかな幹部だけだ。それも舞台裏で天下りをちらつかされれば、親元の意向に逆らえるかどうかあやしい。
そこで自民党など野党には規制庁を公正取引委員会のような独立性の高い「国家行政組織法第3条に基づく3条委員会にすべきだ」という意見がある。公取委だって現在の竹島一彦委員長は財務省出身だし、霞が関からの出向者が要職を占めているから、完全に独立とは言えない。それでも環境省案よりはましだろう。
本来はどういう形が望ましいのか。実は、国会が設置した東電福島原発事故調査委員会が、法律に基づいて事故原因の究明と併せて再発防止体制についても提言する段取りになっている。信頼を失った政府に任せるより、国会の権威をバックにした委員会に考えてもらったほうがいい。少なくとも納得感がある。政府は国会事故調の報告に沿って新体制を整えるべきだ。
※週刊ポスト2012年4月13日号