「ピンク映画が原点です」
『おくりびと』で米アカデミー賞外国語映画賞の栄光を手にした滝田洋二郎監督の受賞後の言葉だ。彼の監督デビュー作は『痴漢女教師』(1981年)。その後も『連続暴姦』『真昼の切り裂き魔』といった話題作をピンク映画で連発していたことはあまり知られていない。
ピンク映画出身で有名監督といえば、『未亡人下宿』シリーズほか数々の傑作を生んだ山本晋也の名が挙がる。山本作品のマドンナだった女優・桜マミが振り返る。
「チョクさん(山本監督の愛称)の現場は、同じピンクでもいつも笑いのある楽しい現場でね、そこで助監督だったのが若き日の滝田クンなんです。あの頃から才能がスバ抜けていた」
ピンク映画から巣立っていった名監督は多い。『Shall we ダンス?』の周防正行監督に加え、ベルリン映画祭で寺島しのぶが主演女優賞を受賞した『キャタピラー』の若松孝二監督。かつて同じくベルリン映画祭出品作の『壁の中の秘事』が「国辱映画」呼ばわりされた汚名を晴らした。この快挙に、往年のピンク映画ファンは拍手を送った。
取材・文■鈴木義昭
※週刊ポスト2012年4月13日号