「探偵はBARにいる」「しあわせのパン」と、2本続けて主演映画で評価が高かった大泉洋。「なんか……カッコよく見えた」という “イケメンじゃない前提なのに、イケメンに見えるぞ”という振り幅の大きさは、かなりの力量ではないだろうか?
映画の舞台であることもあって「しあわせのパン」は北海道先行上映。それが限定的な状況とはいえ、同作が室蘭で“ハリポタの興行を超えた”というのがニュースになった。
ローカルから全国区になるタレントは多いし、地元愛を前面に出すタレント・芸能人だって数多くいる。東国原元宮崎県知事のように、直接的な経済効果を発揮したケースも記憶に新しい。
そんななか、大泉の北海道PR力はずば抜けたものがある。北海道ローカル番組だった「水曜どうでしょう」が全国区の支持を集め、差し入れにしつこく出すことで、共演者に舞台挨拶などで苦情を言わせて「スープカレー」の認知を上げる、基本的には標準語でしゃべるのに“とても”など強調を表す方言「なまら」だけは使い倒して、全国で伝わるようにする――等々。
本人が狙っているかはさておき、大泉が俳優として活躍するのと比例するかのように「北海道限定」「北海道先行」が増えているように感じるのは記者だけだろうか?
元々国内の物流網整備の関係から、北海道や沖縄では本州よりも遅れて商品投入となる場合が多かったことや、独自の食文化から、限定商品が生まれやすい背景はある。しかし現在では、物流に関するタイムラグはほぼ解消され、物理的な要因はさほど大きくない。エリア特性という面で正反対に位置する沖縄と比較するべく、Googleで「沖縄限定」を検索すると1430万件の検索結果数に対して、「北海道限定」は1640万件と、210万件もの差が出るのだ。
北海道限定商品を発売しているメーカーを見ると、「マルちゃん」ブランドの東洋水産、日清、カルビー、ハウス食品、キッコーマンなど、ビッグネームの食品メーカーが並ぶ。沖縄限定商品も同じクラスのブランドやメーカーが並ぶが、北海道ではさらにアイテム数が多いようだ。飲料では、日本コカ・コーラが、「い・ろ・は・す」フレーバーウォーターシリーズで、2日より北海道限定の「ハスカップ」味を発売。
さらに同社は「アクエリアス」「爽健美茶」「からだ巡茶」など人気の7アイテムについて、4月9日販売開始で「北海道民のために開発された新PETボトル」を投入するという。2人暮らしにターゲットを絞った1.25Lのペットボトルで、「スマートボトル」――略して「スマボ」というらしい。
「持ちやすさ」「軽量&コンパクト」「耐久性」など、持ち運びしやすく、ちょうどいい飲みきりサイズというこの「スマボ」には、「軽くて、ちょうどいい、スマートボトル」のキャッチコピーと共に、「北海道限定ボトル」のロゴがあしらわれている。ペットボトルのサイズ展開といったことなら、別の地方都市でも可能かと思うのだが、「北海道民のために開発された新PETボトル」と報道資料の見出しにまで入っているほどの「北海道限定」強調ぶりだ。
食文化に根差した限定アイテムでは地域特性がメインになるが、「先行販売」「テスト販売」といったケースでは、そのエリアについて複数候補から選ぶという場合も。北海道限定ものが多いのは、候補地を検討する担当者の頭の中に、飄々とボヤきながら北海道をアピールする大泉の顔がチラチラして、「ここはひとつ、北海道で!」と推してしまう――なんてことがあるのでは? と、つい考えてしまうのだ。